特別養子縁組する夫婦と子供を縁組に出す女性の生き方を切り取った作品。
どちらかというと縁組に出さざるを得ない女性に焦点を当てた描写が多かった。
ドキュメンタリーのような描き方。
年齢や立場的にも、養子縁組する側に近い私にとっては新たな視点になった作品。
特に、「養子縁組できる状況が羨ましい」というセリフが心に刺さった。
たしかに。
子供を育てられる家庭環境と経済力。
望んだとしても簡単に築けるものではない。
生まれた環境に恵まれなかった人たちは、普通に努力していてもそこから抜け出せないことってきっとある。
本人の努力だけのせいにしてはいけない貧困ってあるのだと思う。
一見裕福に見える日本の中の見逃せない社会問題。
そして、自分で育てられない複数の女性たちはそれぞれの事情があるのだが、そのすべてがやはり痛かった。
以下、ややネタバレかもしれません。
それまで普通に過ごしていた女性も、妊娠出産、養子縁組を通して、人生が変わってしまうこともある。
繊細で愛情深かった故に、なかったことにして、今まで通り暮らすことがどうしてもできなかったんだろう。
そんな彼女にとって、妊娠ははたして不幸だったのだろうか。
それとも愛する人との子供がこの世に誕生したという事実は、やはり幸せなんだろうか。
その答えは、彼女自身の中でしか出せない。
「不幸な出来事だった」と結論づけてほしくないなと願わずにはいられなかったし、彼女のこれからを応援したい気持ちでいっぱいになった。