一方で、「人は食べるために生きているのだ」とは絶対に言えないのが人間の在り方だと思うけど、他方で、食べることを人間の存在条件のひとつとして軽視するわけにはいかないということをよく理解してる人たちがいる。俺は最近、食べものにお金かけたり時間使ったりする、そういう人たちがすごく好き。つまり、普通の言葉でいうと、食べることにこだわるひとは、地に足がついている人だな、と思う。結局は、食べている時間が人間の幸福のかなりの部分を占めるんじゃないかと思うが、どうだろうか。もちろん、「いま食っているものの味がいいから、私は幸福だ」と即座になるほど人間は単純ではないんだけど、誰かと一緒に何かを食べているときが普通の意味での幸福の大半だと思うんだよね。映画館で映画を見たり、作文が表彰されたり、サッカーでPKを決めたり、選挙で当選したり、ディズニーランドに行ったりするときに、満面の笑顔になって、「ああ、私は、幸福だ!」って思うときもあるにはあるんだろうけど、そっちは実は稀で、例外的なことで、俺の日常とは縁遠いことだと思う。幸福の典型は、もっとささやかに、日々繰り返される食事のひとときにあるんじゃないか、と最近は思う。というわけで、私はこれからカレーを作ってきます。料理も楽しい。食べることは、肉体を確認すること、世界の恵みに触れることだとおもう。