名曲には必ず"ストーリー"がある
ロマンチックコメディという軽快なジャンルの中に、予想外の深みと感動を織り込んだ作品です。一見すると、ロンドンの華やかなクリスマスシーズンを舞台にした甘いラブストーリーのように見えますが、物語が進むにつれて、人間の弱さ、再生、そして無条件の愛という普遍的なテーマを静かに、そして確実に浮かび上がらせます。
主人公ケイトを演じたエミリア・クラークの魅力は、どこか壊れやすさを感じさせる表情と、徐々に希望を取り戻していく過程で見せる輝き。可愛らしく、観客に寄り添う演技が最高。一方、ヘンリー・ゴールディングが演じるトムは、ミステリアスでありながら心温まる存在として物語に独特の奥行きを加えています。
本作の最も特筆すべき点は、ジョージ・マイケルとワム! の音楽が作品の骨格を成していることです。彼らのヒット曲「Last Christmas」は単なるBGMにとどまらず、ストーリー全体の象徴として機能しています。この曲の印象がガラッと変わりました。あまりにも名曲すぎる。
ロンドンのクリスマス風景を背景に、きらびやかな装飾や温かな光が織り成す映像美にも惚れる。多文化的な要素が自然に盛り込まれており、現代社会における多様性の美しさを感じさせてくれる本作。"誰か"のクリスマス映画ではなく、"みんな"のクリスマス映画です。
終盤の展開はかなり衝撃的で鳥肌もの。ですが、ただの仕掛けではなく、人物たちが抱える葛藤や成長をより深く理解させるための重要な要素として組み込まれていたと思います。
一度観終わった後も心に残り続ける物語と、ジョージ・マイケルの音楽が織りなす感動。クリスマス映画の枠を超えて、普遍的な人生のメッセージを優しく伝えてくれる一作でした。
2024.12.20 初鑑賞