2019年の韓国映画。主演は韓国を代表する国民俳優のアン・ソンギ。
パッケージにもタイトルにもそそられなかったが、評価の高さにつられて鑑賞。なるほどこれは良作だ。韓国映画らしい感動作でめちゃくちゃ泣ける。主演のアン・ソンギの存在感が作品に安定感をもたらしているし、優れた脚本による人間ドラマで面白味に満ちている。人の生き死について深く考えさせるテーマ性も素晴らしく、ずしりと心に響くと同時に優しい気持ちにさせてくれる。多くの人に観てもらいたい作品だ。
アン・ソンギが演じる主人公は葬儀屋の人間。誰もが関わる葬儀を通し、人の生死というものを考えさせる。彼が面倒を見る下半身不随のひとり息子と、隣に越してきた母娘との話もそれに絡んでくる。ひとつひとつの話が丁寧に紡がれる物語で、その鮮やかさには驚きさえある。連続ドラマ並に深みのある人間ドラマに感嘆した。
隣に越してくるシングルマザーのウンソクを演じるのは、『製パン王 キム・タック』『百年の遺産』『ペントハウス』シリーズなどのテレビドラマ出演で知られる、元S.E.Sのユジン。可愛らしい存在で、本作のムードメーカーとして笑いを提供する。重みのあるテーマでありながらも、コミカルさも盛り込んで笑いに繋げるのが韓国映画の良く出来ているところ。シリアスとコミカルとのバランスが絶妙だ。ウンソクのパートは基本的に笑いどころでありつつも、そんな彼女にも影の部分がある。彼女の強さ、たくましさも、本作の大きな感動ポイント。ウンソクというキャラクターを魅力的に演じたユジンの印象も強く残る。下半身不随の息子を演じたキム・ヘソンとのコンビも微笑ましい。
生きるということ、死ぬということ。それをテーマに、何とも魅力的な人間ドラマに仕上げた手腕に惚れ惚れする。日本とそう変わらない葬儀の様式だからこそ共感しやすい部分もあった。もっと知られてほしい作品である。