このレビューはネタバレを含みます
政治の映画ということで難しそうな話かと思ったんですが、全然そんなことなく気楽に見られました。
いわゆるゲイリーは田舎の村のみんなを利用するという役回りになるのですが、会話がウィットに富んでいて嫌味に見えませんし、ちゃんと敵役のフェイスもきっちりヒールになってくれるので、コメディらしくカラッと物語が進んでかなり好みの内容でした。見れば見るほどゲイリーと物語を追いたくなります。お店の人が作ったシュトロイゼル、結局持って帰るシーンかなり良かった。
食べてるシーンも多いんですが美味しそうでした。
オチを除けば全て良かったです。
本作の最後は、実は田舎の人たちの狂言で、逆にゲイリーの方が騙されていたという展開になります。
後味の悪い映画は好きなのですが、本作の問題は後味の悪さではなく、物語の構造の幼稚さにあります。最後のどんでん返しがあった後、付け足しのように「政治家は4年に1回ちょっとしか来ない」とか「メディアの無責任さ」とか言い訳がましいシーンが続くのですが、要は「ゲームとしてしか機能していない政治システムへのカウンター」を描きたかったのはわかります。
ただ、このカウンターが騙し討ちでいいのか?ということです。政治家は彼らが思っているほど甘くないので、良いのは今だけで、将来的にはこの村はさらに冷遇が進み早晩より過疎化が進むと思われます。今お金が足りない村の住人の気持ちはわかるのですが、本作の制作者がそこまで考えていたのか?と疑問に思いました。
制作者は選挙制度にむかついているのかもしれませんが、この話を認めるのであれば、やってきた政治家を次から次へと暴力的方法で抹殺していくということも認めることになります。
要は、むかついたものに暴力的・欺瞞的方法でやり返してもいい。だって政治が悪いんだから、というメッセージになっています。このメッセージがあまりに幼稚でがっかりしました。
せめて途中で誰かが「このやり方はやっぱりおかしい」と気づくシーンがあったり、あるいはゲイリーがめちゃくちゃ嫌なやつで、こういうカウンターを受けて初めて改心するシーンみたいなのがないと、ただ虚無しか残りません。
せっかくオチまでは良かったのに、最終的に幼稚な騙し討ちをした結果どうなるのか?そこでゲイリーや村人は何を手に入れるのか?という見通しが全く立っていない話でした。途中まで良かったので余計に残念でした。終わりです。