アフガニスタン紛争を描いた作品。
絶え間なく続く銃撃音。
ずっと何千発、何万発の銃撃音を聴いている気分。この攻撃がいつ終わるのかと思う絶望感。
3つの険しい山々に囲まれた谷間。
其処に位置するキーティング前哨基地。
誰が見てもその防御力に疑問を抱かざるを得ない、狙われ易く守り難いその基地を守る米兵達。地元民に必要な物資を供給して懐柔する任務を担いながら日々タリバンの攻撃に晒されていた—— 。
冒頭、開始6分で始まる銃撃戦。
四方を高い斜面に囲まれたこの基地では、仲間同士で軽口を叩いていた穏やかな時間が瞬時に過酷な戦闘へと変貌する。
眉間に皺を寄せた眼差しが父クリント・イーストウッドを彷彿とさせるスコット・イーストウッド。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに於けるエルフのイメージを覆す、丸刈りのオーランド・ブルーム。『ニトラム/NITRAM』のケイレブ・ランドリー・ジョーンズらが出演。登場人物が多く、名前を覚えるのは一苦労。
前半1時間は感覚的に10-15分起きに敵からの襲撃を受けるも、相手が少数なので難なく事なきを得る。
然し乍ら彼らが祖国に残した家族の事を語り、糞尿の始末に苦慮する姿を丁寧に描く事で戦地に於けるストレスが如何に御し難いものかを知らされる。
そして後半の1時間は300人ものタリバン兵に囲まれ、銃撃に晒される彼らの奮闘ぶりをイヤという程に見せつけられる。
とにかく四方八方から銃撃の雨が降り注ぎ、戦争映画でお決まりのRPGもぶち込まれ、味方が次から次へと倒れていく地獄。
キャストの中で誰が素晴らしいってケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。部隊の中で嫌われ者のポジションで、弾薬持って来いと小間使いにさせられる事も多いカーターという役を好演。激しい銃撃戦の最中、傷を負ったメイスという仲間を助ける為に奔走するが…。
「Mace didn't make it」
(メイスは助からなかった)
無事祖国に帰った後、PTSDに対するカウンセリングを受けるカーター。声を震わせ呼吸が整わない中、溢れ出す涙。ケイレブの演技が光る。
史実に基づき製作された本作。
エンドロールでは実際にその命を賭して基地を守ろうとした者達の写真とそれを演じた役者の写真が並ぶ。その多くが20代前半の若者達。
いくら沢山の勲章を得たとて、その命を落として何の価値があろう。ましてその勲章が遺族の慰めになるのだろうか。
戦地に於けるリアリティに拘り、かつ戦争の愚かさを訴える骨太の作品。
あんなとこに基地作るなって!!
その一言に尽きる。