病院で目を覚ましたスジンはこれまでの記憶を全て失っていた。
そんな妻を献身的に介抱する夫。
しかし、スジンはその夫の言動に不可解なものを感じ始め、さらには未来を予言するかのような幻覚を見始める…というお話し。
人間にとって過去の記憶というのは何よりも大事なもの。
記憶があるからこそ人との繋がりを作る事が出来、それによって家族や友達、ひいては社会というものを作り維持する事が出来ます。
それ以前に、人間は過去の記憶がなければ自己の同一性すら保てなくなるかもしれません。
だけれど一方で人間の記憶というのは曖昧で、案外過去の記憶っていうのは無意識のうちに作り変えられていたりもします。
そう考えると人間は真実の中ではなく、半分はある種の想像の中で人生というものを作っているとも言えます。
本当は少し違う、もしかしたらなかったかもしれない、でも自分にとっては大切な記憶。
時に人にとって大切なのは残酷な真実ではなく、優しい嘘の記憶なのかもしれません。
そして、それが嘘だとわかっていたとしても、それを心の拠り所にする事は決して間違った事ではないのかもしれません。