あらすじ:ブレないやつはくたばらないよ。
奇跡を起こしがちなベネデッタは、10歳で修道院に入り名声を高めていったが、目ざとい院長に睨まれていた。そんな折、毒親から逃げてきた少女バルトロメアに出会い…というお話。
おそらく、マリア像転倒を無傷で回避した時、周囲の反応をみて悟ったんだろう。私はこの聖女キャラを乗りこなせばいける、と。
ベネデッタは、誰よりもリアリストだった。あの混沌において唯一人、(皆が信じるところの無差別無条件に人を救う)神はいないと確信していたから、「神を信じている連中が私を守ってくれるペシアにいる限り生き残れる」という冷静な計画を立てられた。ストレスに潰され自分に鞭打つ憐れな信仰者や、感情に振り回されるバルトロメアや、私利私欲に左右される権力者たちとは違って、ブレなかった。
その心理はサイコパスで、他人を利用してはいるが、迷惑をかけたり搾取したりはしていないし、むしろ何からも縛られない軽やかさや不動ゆえの安心感が、不安や恐怖に縛られた人々の拠り所になることもある。物質主義者たちが、最期に彼女の生き方を認めると共にその嘘を求め、息を吹き返したり救われたりするくだりには、確かな心の動きがあった。
クチュクチュハァハァとか胸糞(拷問シーンは見るに耐えず倍速にした)とか、バーホーベン先生の胃もたれ演出は健在。シャーロット・ランプリングやランベール・ウィルソンなど、惨劇が似合う名優のゲス芸も見もの。フェリシティ・ジョーンズをだらしなくした感じの、ダフネ・パタキアも良かった。