『ベイビーわるきゅーれ』1作目
女子高生殺し屋2人組のちさととまひろは、高校卒業を目前に控えるも、途方に暮れていた。これまで組織から委託された人殺し以外何もしてこなかった彼女たちだったが、明日からはオモテの顔として社会人として振る舞わなければならない。社会に適合しなければならず、公共料金の支払い、年金、税金、バイトなど、社会の公的業務や人間関係、そして理不尽さに揉まれる。組織からはルームシェアを命じられ、他者とコミュニケーションを取るのが苦手なまひろは、そつなくバイトをこなすちさとに嫉妬する。二人の仲は次第に険悪になってしまう。それでも殺し屋の仕事は忙しく、さらにヤクザから恨みを買って面倒なことに巻き込まれていく。社会に適合できない2人のゆる〜い日常を描いた物語。
明るく陽気で子どもっぽいちさとと、いつも冷静沈着で人間関係が苦手だが圧倒的な身体能力を持つコミュ障のまひろ。黒髪ロングと金髪ショートの見た目も性格も正反対な陰と陽の対極的な2人のゆる〜い何気ない日常のほのぼのした会話のやり取りが和む。
バイトの面接が上手くいかない、コミュニケーションが上手くできない、ルールに沿って行動するのが苦手な社会不適合者の2人が社会に適合しようと悪戦苦闘しながらも社会の荒波に飲まれ必死に頑張ろうとしている姿を見ると元気をもらえる。社会に適合する難しさや自分の得意不得意といった人生で大切なモノが丁寧に描かれ共感できる部分が多々ある。
2人のゆる〜い日常と殺しをする時のオンオフの切り替えのギャップがたまらなく好き。子どもっぽい可愛らしいちさとが殺しになるとスイッチが入って殺し屋モードになり銃を持って顔つきが変わったり、喧嘩をしない華奢そうなまひろが鼻血を出しながらキレキレの格闘をしたりと見た目とのギャップがありすぎて痺れる。
冗談を言っただけの団子屋が不憫すぎて可哀想。
“チャチャチャチャチャチャチャチャ”
と言いながら犬がフローリングを歩くモノマネをするちさとの幼さと可愛さが滲み出ているシーンが一番のお気に入り。
愚痴を言ったり喧嘩もしたりと殺し以外はごく普通の一般的な女性という設定なのが良い。最後までなぜ殺し屋をやっているのかという理由が明かされないし、そこが重要ではないのだろうなと思う。
ルームシェアをする2人の部屋は人型サンドバッグが部屋のど真ん中に置いてあり、飾らない内装が素敵。2人横並びで仲良くおでんを美味しそうにつついてるシーンはとても癒される。
メイド喫茶でコンビニのサンドイッチを贅沢品だと言うメイドが可愛い。ちさとがメイド喫茶に馴染めたのに対し、まひろが会話の輪に入れず帰ってしまうという気持ちが分かる。喧嘩しても向き合って不器用なりにちゃんとあやまるまひろのキャラが愛らしい。
緊張感のないゆる〜い日常と細かい小ネタ、格好良い銃撃戦、腰を落とした本格的な格闘シーンの不自然な組み合わせが絶妙なバランスを保っておりとても面白い。ヤクザ親子の登場で緊張感が漂うシーンもあるが基本的にはゆるくコミカルに観れるので楽しめる内容になっている。
スタントパフォーマーとして活躍する伊澤彩織の華麗なる迫力のあるアクションは本当に素晴らしい。ソファーにアクロバティックに座るだけでも身体能力の高さが分かる。髙石あかりと伊澤彩織の歳の差が9個も離れているのにそれを全く感じさせないのが何よりも凄い。
ラバーガールの2人が好きだから登場していて嬉しかった。2人とも普段のネタやってる時とあまり変わらない雰囲気だから良い。
2人のゆる〜い日常をずっと観ていたい。
“君のDOLCE & GABBANAのその香水のせいだよ”の小ネタが意外と好き。