「ここにいるの?」
泣いていて欲しくないんだと思う。
生きている家族が。
大切な人たちが幸せで生きていてほしい…
それが、亡くなった人の願いだと思う。
私事ですが、この映画を観て思い出した事があります。
母が倒れた日、
玄関の人感センサーの電気が、急につかなくなりました。
その後もずっとつかなかったのに、
二週間後、修理も何もしてないのに、突然また点きました。
そしてその直後、病院から、
「ICUから一般病棟に移りました」と連絡がありました。
きっと亡くなった父があの世から帰ってきて、
病院にいる母とあたふたする私たち姉妹を心配していたんだと思いました。
そして再び電気を点けて、
母の命がもう大丈夫だということを、私たちに知らせてくれたんだ…と、
後になって思いました。
偶然と言ってしまえば、そうなんですけどね…
一日中雨模様で、ちょうど近畿地方が梅雨入りした日に観ました。
この映画の中でも、ラジオが梅雨入りを告げていました。
“今年も妻の誕生日にカレーを作っています。ただ、いろいろあって今年は一人です”
土砂降りの雨の日、
ラジオを聴きながら、一人でカレーを作る男(リリー・フランキー)。
何か事情があって、今は一人暮らし。
そして傍らには、
幼くして亡くなったらしい
息子さんの写真が…
カレーを煮込んでいる間、
他にだれもいないはずの部屋に、
カタコトと音が…
「ここにいるの?」
私もあの時以来、
父はお墓ではなくて、玄関にいると信じています。
回想シーン以外はずっと同じ部屋の中。
雨が降っているから部屋も暗くて
雷で停電したりする陰鬱な雰囲気…
それとシンクロするように、
リリーフランキー演じる男の心の痛みも
辛いほど伝わってくる。
でも、どんなに土砂降りの雨も
やがて止み、
どんなに暗い夜でも、やがて朝はくる。
明けない夜はない。
ラストはちょっと温かい気持ちになり、
リリーフランキーがはにかんだ笑顔を見せた時、
私もそのカレーが食べたくなりました。
カレーはやっぱり笑顔が似合う。
リリーフランキー、すごいな…