「ヘレディタリー/継承」と「エクソシスト」を織り交ぜたような擬似ドキュメンタリー映画。タイの土着信仰の女系祈祷師の家系の娘に悪霊が取り憑いて、祈祷師の叔母がそれを取り除こうと立ち上がったけれど…。ドキュメンタリーなのかフェイクなのかが判然としない前半が実に不穏でとても上質だし面白い。土着信仰の儀式のありようや演技のリアルさ。主人公が正常と異常を行きつ戻りつしながら様子がどんどんおかしくなっていくさまの恐ろしさ。廃工場の雰囲気にもゾワゾワとする。この祟りの根っこの一つの原因だと思われる犬肉食への嫌悪感。主人公を恐れて奇行を生じる飼い犬は完全に演技じゃなさそう。そのあまりの無残な末路がこのお話の一番イヤな場面であるかも知れない。彼女がプレイランドで子供らを暴行し泣かせる場面もそうかも知れない。ただ主人公の奇行を記録する為に隠しカメラを設置した中盤辺りからクライマックスへ向かっていく過程が、いくつかの秀逸な場面(赤子の泣き声、儀式の様式美)を挟みつつもどんどんありきたりなPOVホラーっぽくなっていくのが残念。ラストの叔母のまさかの告白はイヤな余韻を響かせて面白かった。