あまり予備知識なく鑑賞。
北アイルランドで起こった、プロテスタントとカトリックの宗教争いについてだった（正確に言うと、暴徒化したプロテスタントが抵抗していないカトリックの人々を襲っていた）。
子どもの視点なので、不穏な空気を感じつつも、暴動が起こるのはある日突然だった。
アイルランドに関して、ぼんやりとした知識しかなかったのでネットで調べてみた。
南アイルランド（現アイルランド）はカトリック信者が主、北アイルランド（現イギリス・北アイルランド）はプロテスタント信者が主だったようだ。
そして、ベルファストはカトリックとプロテスタントが入り混じる地点だったとのこと。
政治的志向の違い（イギリスに統合されるか否か）や、カトリック信者への住居や職業に対する差別などが頻発していたらしい。
それゆえに、暴動が起きた。
2021年にもベルファストでカトリックとプロテスタントが対立し、負傷者が出る事件が起きていた模様。
いまも対立はなくなっていない。
こうした背景を踏まえると、この映画の解像度がグッと上がる。
主人公・バディからすると、ある日当然起きた暴動により、近所の景色が一変し、これまでのように仲良く平和に暮らすことができなくなった。
そして、両親の（苦渋の）決断により、一家はオーストラリアへ移住することを決意する。
決してこれは新天地へ向かう希望の話ではないし、暴動からただ逃げる人々の話でもない。
ただただ分断を描いた話といえる。
分断がいかに突然起こり、
修復不可能なレベルの傷跡を人々に残すのか。
ただそれだけが表現されている。
うれしくなるような話はほぼないが、
見ておかなければならない映画の一つだと思う。
