Pinchさんの映画レビュー・感想・評価

Pinch

Pinch

映画(251)
ドラマ(0)
アニメ(0)

The Public Image Is Rotten ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン(2017年製作の映画)

3.6

John Rydon が1977年から1981年にかけてこの世に産み落とした4作品、つまり "Never Mind the Bollocks" "Public Image: First Issue" >>続きを読む

ナイトクラビング:マクシズ・カンザス・シティ(2022年製作の映画)

3.2

ベルベット・アンダーグラウンドもストゥージーズもパティ・スミスも素晴らしかった。しかし、この映画は彼らの素晴らしさを映し出してくれるわけではない。マクシズ・カンザス・シティのエッセンスはほぼ伝わらない>>続きを読む

ザ・ビートルズ:Get Back(2021年製作の映画)

3.8

13歳から1年半ビートルズに心を釘付けにされた身としては、ディズニープラスで公開されたときに観ざるを得なかった。今回再び視聴。四人がいくら魅力的だとはいえ、長くて終盤はちょっと飽きたかな。まあ、神話の>>続きを読む

ロッキー・ホラー・ショー(1975年製作の映画)

4.1

20年ほど前にアメリカの小劇場でミュージカルを観たんだよね。なぜか内容は全く記憶にない。覚えているのは、ショーの最後に観客全員が立たされ、役者のかけ声に合わせて簡単な踊りを踊らされたこと。客の中には主>>続きを読む

リトル・ミス・サンシャイン(2006年製作の映画)

3.8

キャラクター揃いが見事で楽しく笑えるスラップスティックだが、つらい現実を背負うことを厭わない納得できる展開。負け犬にならないための自己啓発も、愚かな古き良き快楽主義も、逃げてばかりの厭世主義もぶっ飛ば>>続きを読む

マトリックス(1999年製作の映画)

2.4

マトリックス三部作をまとめて。アクションと戦闘の映像作りは立派だとしても、せっかくの興味深い発想が陳腐な勧善懲悪ものに堕している。オードブルとメインディッシュの出来が完全逆転。かなり残念なコースでした>>続きを読む

どうすればよかったか?(2024年製作の映画)

3.6

身内に似た症状を呈した者がいる。ジャック・ラカンが言ったと思うが、上の歯と下の歯が全く噛み合わない状態(シニフィアンとシニフィエが分裂した状態)を目の前で見た。この映画で見られる重い状態の少し軽いパタ>>続きを読む

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)

4.4

極度の災害下にあるということは、人々を守る現在の社会システムが完全に崩壊することを意味する。この映画は、人権や生きるための防御を剥ぎ取られた人間の醜い本能を的確に映し出している。人間という生物は、歴史>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

3.8

枠組は原作と同じだが、軽薄さに余りある原作とは異なり、同性愛者の孤立感と孤独感を前面に打ち出し、ずっと堅実でオリジナリティの強い仕上がりになっている。このテーマに係る偏見については自分も心当たりがある>>続きを読む

異人たちとの夏(1988年製作の映画)

2.2

有名脚本家と有名俳優陣のネームバリューと技能によって粗悪な人情ものをごまかした駄作。今と同じく跳梁跋扈する愚者どもの無意味な免罪符。当時が特別よかったわけじゃない。この作品のように、貧しなくても鈍して>>続きを読む

エレメント・オブ・クライム(1984年製作の映画)

3.8

ラース・フォン・トリアーのデビュー作。タイトルとジャケットフォトから『イディオッツ』の雰囲気を思い出し、若者の犯罪者集団の話という先入観を抱いていた。実際には、ヨーロッパ仕立ての不可解な犯罪ミステリー>>続きを読む

ブラック・スワン(2010年製作の映画)

3.4

闇に隠れた裏の世界というテーマとバレエ芸術という表の背景がうまく結びつかない印象があった。このようにどちらも中途半端な映し方に終わらせないのであれば、お互いがお互いを徹底して潰し合う極度に悲惨な作品に>>続きを読む

陪審員2番(2024年製作の映画)

3.8

司法も個人も正義と良心に堂々と従うことができないジレンマ。それでも最後の最後には正義と良心に基づいて行動したいという不安と期待。記憶の中での揉み消し。消えない良心の呵責。自分と他人を犠牲にしてでも真実>>続きを読む

憐れみの3章(2024年製作の映画)

4.4

結局のところ、何が正しいか間違っているか、正常なのか異常なのかは、時代によっても個人によっても異なる。したがって、その最大公約数を定めた「法」とそれを支える「良識」は、常に違反者を生み出す。人間とは「>>続きを読む

大きな家(2024年製作の映画)

4.3

人為的な同情心を呼び起こすことのほぼない、誠実なドキュメンタリー。基本として、この子たちは、他の子たちと分け隔てのない公平な視点から描かれている。そこには、人を差別的に見ないまなざしがある。その姿勢が>>続きを読む

自由の暴力 デジタルリマスター版(1974年製作の映画)

4.8

男性の同性愛者たちを極めて自然に、キワモノ性を最小限に留める形で描いていることに驚く。いくら自分が同性愛者だからといって、社会的に問題視されがちな同性愛という行為を、社会的に是認されている異性愛と変わ>>続きを読む

サンドラの週末(2014年製作の映画)

4.5

映像、台詞、筋書きで駄弁を弄すことなく、あり得る日常を淡々と描きながら、最後の最後で理屈の上での正しさではなく正しいという感性のかけらを投げつける。痛くはないが、忘れ難い形で少しピリッと響く。ここまで>>続きを読む

リリー・マルレーン 4K デジタルリマスター版(1980年製作の映画)

3.3

私たち個人は多かれ少なかれ何らかの組織の中で生きている。その組織の実践は例外なく誤りを含むが、それを許容しなくてはならない。完全に狂っていたとしても、受入れなくては生きていけない。飲み込まれれば楽だが>>続きを読む

オットーという男(2022年製作の映画)

3.3

ありがちなヒューマン・コメディだが、同じ共同体に生きる共生感覚について考えさせられた。それは前近代的で足枷にもなるが、一人ひとりが生きるために欠かせないもの。その崩壊は悲惨な結末をもたらす。現在の状況>>続きを読む

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

3.3

多かれ少なかれ誰でもそうだと思うが、物心ついてから20歳あたりまでは、表面上はともかく心の中はとんでもなく混乱していた。私の場合は、やはり9歳か10歳のときに重大な心的衝撃を経験し、誰にも言えずかなり>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.7

街、海、自然、邸宅の内外、衣装の妖しく美しい色彩。控えめで神秘的だが日常に馴染み何かを示唆する音楽。嘲笑的だが冷静に周囲と自己を見つめるまなざし。常軌を逸した凄さを感じる一方で、全てがあまりにもあっさ>>続きを読む

カラーパープル(2023年製作の映画)

3.8

途中はともかく最後の最後まで観終えたときに心に浮き上がってきたのは、うまくごまかされたような居心地の悪さ。こんなにうまく行くはずがないし個別的によかっただけで本質的には何も解決していないじゃないかとい>>続きを読む

ジーザス・クライスト・スーパースター(1973年製作の映画)

4.2

しばらく前に、ミュージカル好きの親戚の親子が劇団四季の公演を観たあとでうちに遊びに来たとき、小学生の女の子が「ジーザスクライスト、ジーザスクライスト、ナーナーナーナーナーナー、ニャーニャーニャー」と口>>続きを読む

奇跡の海(1996年製作の映画)

3.8

今まで観たラース・フォン・トリアーの作品の中では、ギミックの最も少ない平穏な作品だった。だが、人間というものが行き場の見つからないどうしようもなく不幸な存在であるという前提に変わりはなかった。「あ、あ>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.0

溢れるセンス、テクニック、ど根性で高度なアニメーション映像を練り上げた優秀な作品だと思う。「外のおかしなものを求めずに、ここで、分相応に正しく生きていくのですよ」というモラルを打ち出すおとぎ話をベース>>続きを読む

気狂いピエロ(1965年製作の映画)

4.7

この映画以降ずっと継続するゴダール独特の詩的、知的世界観が、平凡なドタバタ逃走劇の中であざやかにほどよく示されている。深刻でシュールで気違いじみているのに、なぜか爽やかで明るい。刹那的で美しい。最後に>>続きを読む

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)

4.5

暴虐が自分たちの身にひしひしと迫れば、このようにストレートに分かりやすく闘うしかない。それを後進的・直情的だなどと笑うことなどできない。あまりに真っ直ぐのキャラクターと状況設定にちょっとためらいを感じ>>続きを読む

すばらしき世界(2021年製作の映画)

3.8

現実はすべからく映画の通りだと思うが、役所広司という優れた役者の醸し出す雰囲気が極道の役柄とは少し相容れないような印象があった。足を洗うという流れから意図的にそうしたような気もする。"Perfect >>続きを読む

岬の兄妹(2018年製作の映画)

3.7

重く厳しい現実を赤裸々に描いた点で、よくここまで惨めさを際立てたなと思う。ストーリーを通してよくも悪くも新たな光は表面上見えてこないものの、このボロボロの状態を何とか生き延びるしかないという認識は伝わ>>続きを読む

ロボット・ドリームズ(2023年製作の映画)

4.0

タイトルとイラストのシンプルさから興味が湧き、何の先入観もなく観ました。えっ、台詞なしか。"September" は全然好きではなかったけれども、ドッグとロボットが踊るシーンは本当に楽しそうでよかった>>続きを読む

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜(2017年製作の映画)

4.0

ユン・ソンニョルによる戒厳令宣言と撤回の翌日に視聴。光州事件に見る全斗煥軍事政権の圧政ぶりを確認。熾烈な政治闘争の混乱に苦しんできた韓国民にとって、民主主義は自ら戦い取ったもの。自ら守り抜くべきもの。>>続きを読む

雨の中の慾情(2024年製作の映画)

4.2

つげ義春の作品から感じ取ることのできるものは、日常に垣間見られる突き抜けた恐怖と絶望、向こう見ずな暴力性と諧謔性、現実と幻想が入り組んだ超現実性、そして純粋な抒情性である。

この映画は、つげがかつて
>>続きを読む

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声(2024年製作の映画)

3.9

まず、冒頭の戦艦による戦闘の映像技術が素晴らしい。そして、ストーリー全体が第一作よりもやや多様で分かりやすく飽きが来ない。例えば、皇帝二人の愚かしさと異常性、極悪人であるデンゼル・ワシントンのほどよい>>続きを読む

グラディエーター(2000年製作の映画)

3.3

いつの世も、人は無意味に抹殺され、振り向かれもしない。昔は、そのあまりの酷さゆえ、神話や物語を通して、身体が消えてもかろうじて魂は残った。今はと言うと、魂がじっくりと死に追いやられ、身体だけがユラユラ>>続きを読む

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(2023年製作の映画)

4.5

現実の厳しさを踏まえた、浮かれたところのない、いい話だった。三人とも、表面上はどうあれ心の中では正しく生きていける。特にアンガスはな。年齢、人種、外見、立場に関係のない、人としての大切な何か。これさえ>>続きを読む

茶飲友達(2022年製作の映画)

3.3

幸福は虚飾、瞬時に死に絶え、心の空虚が膨れ上がる。この事態から目を背けられない現状をあらためて感じさせる映画。もう少し深掘りして欲しかったな。