良い映画は答えを用意しない。多くの命を救うために一人を犠牲にしても良いのか。この道徳的なジレンマを含む問題には、人間の尊厳とは何か、正義とは何かという問いが内包されている。どんでん返しのミステリー。芯>>続きを読む
死ぬと思ってした告白がパンドラの箱を開ける。極限状態に陥ったときに突きつけられる自分の本性ほど恐ろしいものはない。社会的、倫理的にも受け入れられない感情や欲望。罪と罰。これはどんな人間の奥底にもある悪>>続きを読む
どんな美談に仕立てられようが、結局のところ、殺し、殺され、奪い、奪われるのが戦国の世だ。また、巨大な権力は、暴力と恐怖によって培われ、維持されることは、多くの歴史が物語っている。美しさと醜さ、強さと弱>>続きを読む
17才の息子と母。子供ではないけれど大人でもない。そんな微妙な年頃の微妙な距離感。怒りも、寂しさも、やるせなさも、すべてを自分の胸に受け止めて過ごす日々。大好きだけど大嫌いで、大嫌いだけど大好き。それ>>続きを読む
息が詰まりそうな世の中だ。ミスは絶対に許されず、少しの瑕疵も見逃してはもらえない。完璧を求められ、真面目であればあるほど、気持ちがふさぎ込む。心身を病んでいる主人公が、許し、許され、凝り固まった心が次>>続きを読む
息が詰まりそうな世の中だ。ミスは絶対に許されず、少しの瑕疵も見逃してはもらえない。完璧を求められ、真面目であればあるほど、気持ちがふさぎ込む。心身を病んでいる主人公が、許し、許され、凝り固まった心が次>>続きを読む
大阪、西成、オレオレ詐欺、賭博、横領。原作・黒川博行、監督・原田眞人、そこに安藤サクラが加わると、こんなにもカッコいいフィルムノワールが、日本でも撮られたしまうのかとただただ感嘆する。さらには、山田涼>>続きを読む
声なき声に耳を傾け、世に知らしめる。映画にはそんな役割があると信じている。家族に虐待される子供たちも、息苦しさを感じているトランスジェンダーの人たちも、きっと心の中で叫んでいる。世界で一番孤独なクジラ>>続きを読む
科学者が真の意味で自由であることは難しい。なぜなら、政治をはじめ、宗教や倫理、所属する組織や人間関係など、あらゆるものに制約されるからだ。「原爆の父」として国家的な英雄となったものの、その呪縛に苦しめ>>続きを読む
やさしくありたい。できるだけ寛容でありたいと思っているけれど、これがなかなかに難しい。そもそもやさしさとは何かを考えさせられる。パニック障害の山添くんと月経前症候群の藤沢さん。自分の弱さを認めながら、>>続きを読む
映画にはときおり「存在しない人」が描かれる。彼らは、息をし、鼓動し、悲しみを受け止めながらも、確かに生きている。それでもなお、世間に存在しないのは、多くの場合、親のエゴや社会の不備が原因だ。「精根尽き>>続きを読む
奇をてらうことのない澄みきった映画。それは、小さな豆腐屋の店主である主人公の、水と大豆とにがりでつくられる豆腐と重なる。原爆を落とされてなお、生き抜いてきた広島・尾道で暮らしを営む人たちの哀しみ、強さ>>続きを読む
子どもの存在は映画に欠かせない。先入観や固定観念に縛られず、目の前に起こることをありのままに見つめ、感情を表す子どもの感受性は、いつも観客をハッとさせる。一方、そのあまりに純粋な眼差しは、他者の感情や>>続きを読む
お約束の冒頭シーン。「最も日本人らしい日本人」という理由で、日本人宇宙飛行士になった寅さんがなんとも滑稽。寅さんは、いつものように惚れっぽく、純情で、鈍感で、意気地がなく、やさしい。第36作は山田洋次>>続きを読む
宮崎駿は2度目の引退会見で「この世は生きるに値するんだ、ということを伝えるのが自分たちの仕事の根幹になければいけないと思ってきた」と発言した。また、別のインタビューでは 「生きててよかったんだ、生きて>>続きを読む
混乱、略奪、暴動。人々が暴徒化する背景には必ず不安と恐怖がある。そして、人間を不安や恐怖に陥れるのは、大抵の場合、虚偽の噂やデマが引き金となっている。メディアの扇動、根も葉もない噂の伝播、同調圧力によ>>続きを読む
寅さんは困っている人を放っておかない。放っておけない。それは、自己犠牲の精神、キリスト教の隣人愛や仏教の慈悲のような大袈裟なものではなく、人の情け、思いやりによるものだ。そして、寅さんは見返りも求めな>>続きを読む
それしか生きる術がない。純粋であればあるほど、孤立は高まり、やがて狂気じみていく。常識を超えていく創造性、極限の自己表現、お笑いに憑りつかれたカイブツの熱量にただただ圧倒され、その生き様がヒリヒリと胸>>続きを読む
集合住宅のコーポという響きには、なんとなく、懐かしい温もりがある。そこに住む住人たちは、それぞれに問題や秘密を抱える、いわゆる訳ありの人たちだ。助け合うけれど、干渉はしない。何も言わず、何も問わず、た>>続きを読む
映画や文学はときに倫理を超える。執行を待つだけの死刑囚と、殺害された男性の婚約者だった女性との「つながり」を描いたこの作品には、もっと根源的で、本能的な「生」と「性」が貫かれている。自ら望んだわけでは>>続きを読む
純粋無垢にして残酷な、繊細にして危うく脆い、子どもたちの世界を描いたら、この人の右に出る者はいない。それは、どんな親も、どんな教師も、入り込むことのできない「聖域」だ。唯一、例外があるとすれば、それは>>続きを読む
日本語でいちばん美しいのは「慮る」という言葉だと思っている。そして、相手を思いやるには想像力が必要で、恋こそが最も想像力を育む大きな糧になることは、多くの詩歌、文学が物語ってきた。デジタルは便利である>>続きを読む
性表現の自由のために戦った大島渚は、性は人間の生に根差しており、それを描くことは、人間性そのものを追求する行為だと考えていた。細密な描写、繊細な色使い、構図の工夫といった芸術的な価値のみならず、人間を>>続きを読む
映画を観ていると、生まれた場所で育ち、暮らし、生きるということが、いかに当たり前ではないかがよくわかる。そして、故郷を追われるということが、人生で起こりうる最も悲劇的なことであるということもだ。離れ離>>続きを読む
渥美清、あるいは、高倉健のように、吉永小百合は生きる伝説だ。どんな俳優も、女優も、ともにスクリーンに映るだけで、必然、日本映画史の一部となる。そして、もう一人の伝説、山田洋次。母三部作の最後にして現代>>続きを読む
想像力が豊かで共感力が高すぎるがゆえに、人の感情を自分の感情のように感じ、他人の痛みや悲しみを自分の感覚にしてしまう人のことを「エンパス」と呼ぶらしい。やさしく、繊細な人こそ、生きにくいというのは事実>>続きを読む
東京で知ったのは、いろんな人がいろんな風に生きている、ということだ。とくに夜の新宿では、いろんな人も、いろんな物も、いろんな事もみた。新宿歌舞伎町、ゴールデン街のバーで繰り広げられる人間模様は、どれも>>続きを読む
作り手の熱意こそが作品に魂を宿す。それは実写もアニメも同じだ。想像を超える志の高さと、決して諦めない執念が、誰もが知るあのキャラクター、あのストーリー、あの世界観を超越した、奇跡の映画を生みだした。湘>>続きを読む
日経平均株価が初めて1万円を突破し、日本のバブル経済の始まりの年とされる1984年。働いて、働いて、働いて、その先にしあわせは訪れるのかを、すでに予見している寅さん34作。好景気だろうが、不景気だろう>>続きを読む
昭和の銀座。金と欲望が渦巻く世界は、どこか非現実的で、そこにたむろする人々、ひとり一人の人生にドラマがみえる。銀座を牛耳るヤクザが経営するバーに響く、一癖も二癖もあるミュージシャンが奏でる「ゴッドファ>>続きを読む
ほとんどの場合、答えはもう決まっている。そして、多くの場合、みんな、気づかないふりをし、見て見ぬふりをし、問題を先延ばしにしながら生きている。理屈ではなく感情で動く人間の弱さや狡さをつまびらかにしなが>>続きを読む
自由であるということは孤独や寂しさを受け入れることでもある。ほんとうに自由な人となかなか出会えないのは、孤独や寂しさを受け入れている人が、ほとんどいないからだ。有村架純が演じる「ちひろさん」は、大人の>>続きを読む
かつての舎弟・登と再会し、一瞬、気持ちが高揚するものの、ふと状況を察知し、さっと身を引く寅さんが、なんとも潔くて、カッコいい。身の程を知るとでもいえばいいのか、もはや死語になりつつある「弁え」、その「>>続きを読む
彼らは何をそんなに怖れたんだろう。無実の市民が警官に頻繁に殺されてしまうあの国に横たわっているのは、偏見と疑心、それらを生みだす「怖れ」だ。同じ国に生まれながら、黒人は白人を怖れ、白人は黒人を怖れる不>>続きを読む
オリジナルの脚本であること。氣志團が主題歌を歌っていること。宇宙人の物語であること。グチャグチャてんこ盛りであること。叫びたいくらいに純真であること。それでいて、決して重くないこと。そして、家族の普遍>>続きを読む
深田監督の映画はいつも痛い。ひりひりする。触られたくない傷口をゆっくりグリグリされるような痛みがある。人間のエゴ、狡さや弱さ、赦しがたいことを乗り越えてたどりつく「境地」。LOVE LIFEが、理屈や>>続きを読む