酢さんの映画レビュー・感想・評価

酢

The Spirit of Wonder チャイナさんの憂鬱(1992年製作の映画)

3.3

存外正攻法で鶴田謙二の世界観がアニメ化されていて「やるじゃん本郷みつる」と。そしてほんのりラブコメ風味なセンスオブワンダーは年末にまったり見るのにうってつけの内容。温泉に入るのと同じくらい癒されました>>続きを読む

強迫/ロープ殺人事件(1959年製作の映画)

3.3

天才学生のアーティとジャドが挑む完全犯罪。これがジワジワと瓦解していく流れは期待通りの面白さ。二人の間に漂う歪な支配関係も見過ごせない。ただ彼らはあっけなく逮捕されて、中盤からは大衆演劇のようなコッテ>>続きを読む

死霊の罠(1988年製作の映画)

3.5

今年はこの手のケレン味爆発スプラッター映画をあまり摂取していなかったので駆け込みました。結論から言うといやあ素晴らしかったなあ。ジャーロ顔負けのハイテンション殺人。廃工場を水と煙で迷宮じみた異空間へと>>続きを読む

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(2020年製作の映画)

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クリシェの切り貼りなお涙頂戴演出と、過度なフォトジェニック描写の数々を友人達とワイワイと罵倒・嘲笑しながら鑑賞した。はなから馬鹿にする気満々で臨んだのでスコアは付けられません。

その上で、いやしかし
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恐怖の土曜日(1955年製作の映画)

3.0

とある街のそれなりに皆がアレコレを抱えている日常生活を前振りとして1時間丁寧におこなった上で、銀行強盗勃発で一気に根底から崩す。ああ日常って儚いね、と。やりたい事は何となく伝わる一方で、構成が効果的だ>>続きを読む

ドラミちゃん ハロー恐竜キッズ!!(1993年製作の映画)

3.0

ジェネリック『のび太の恐竜』。セワシの気性の荒さはキャラとしては新鮮だけど、だから面白いということはない。パチモンスネ夫とパチモンジャイアンで感動ストーリーをやられても弱さが拭いきれないのよなあ。あと>>続きを読む

ドラミちゃん アララ・少年山賊団(1991年製作の映画)

3.5

往年のドラえもん映画を見直すとかなりヘロヘロな構成で驚くことが多い中、併映作品は本編より自由度が高いのかかなり面白い。おれの中で勝手に再評価の機運が高まってます。今回も監督・原恵一の時代劇ということで>>続きを読む

ドラミちゃん ミニドラSOS!!!(1989年製作の映画)

3.5

あんまりゴチャゴチャ言いたくないね。「ワクワクな冒険譚をいかにして40分で成立させるか」のみに専念した透明な傑作。近未来が舞台ということでややもすると絵空事に堕ちかねないところ、バチバチなレイアウトが>>続きを読む

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(2024年製作の映画)

3.0

「1」は未見です。若い女の過激な痛ファン相手に舞い上がったり翻弄されたり、ダサさが微笑ましい中年童貞アーサー君。カリスマは等身大の自分に降りることを許されず最後は自分の虚像に殺される。まあそりゃそうな>>続きを読む

Cloud クラウド(2024年製作の映画)

3.0

きちんとした長編で黒沢清を観るの初めてかも。なので清LOVERの皆様に詳細なレビューはお任せするとして、個人的には期待値をかなり下回った印象。だって『Cloud』ってタイトルで転売ヤーの話と聞いたら、>>続きを読む

センチュリアン(1972年製作の映画)

3.5

どこまでも地に足着いたやるせなさに満ちたビターな一品。小さいエピソードを積み上げる系の構成だったから感情移入し過ぎずに見れたけど、正面から喰らったらヤバかっただろうな。ジョージ・C・スコットは昔気質の>>続きを読む

ナミビアの砂漠(2024年製作の映画)

3.3

冷笑する気満々で臨み、その観点では「あーはいはいZ世代ってこうよね〜」と満足(作っているのはほぼ同年代の人たちだけど)。ただ物語が進行するにつれて河合優実が新時代のアイコンとしての輝きを失って、鬱病患>>続きを読む

ドラえもん のび太と雲の王国(1992年製作の映画)

3.0

追悼大山のぶ代・小原乃梨子。この時期の大長編ドラは見る度に脚本の緩さにずっこける。今作なんて「頭突き」ですよ。納得できるわけないだろ。エンタメとしての総合的な完成度より、現実の写し絵のように煮詰まった>>続きを読む

ハウス・バイ・ザ・リバー(1950年製作の映画)

3.0

ルイス・ヘイワードの犯行シーンのザラザラとしたキモさがナイスです。陰影くっきりな撮影のおどろおどろしさもありがたや。あとは一捻りされた脇役連中が尽く良いお味だったね。善良ぶって勝手なことを喚き散らすデ>>続きを読む

夜行性情欲魔(1970年製作の映画)

3.5

はあメロい💖分け入っても分け入っても淫靡なムードとイタリーなオシャンBGMの掛け合わせで溶けそうになる🫠古城のインテリアは妖しさ抜群。現代アートテイストなカラフル図書館でSEX、清新な青姦SEX、ブル>>続きを読む

彼女たちの舞台(1988年製作の映画)

3.5

わかるよーなわからんよーなリヴェット。毎度おなじみ日常と陰謀のマリアージュを見つつうつらうつらするのは至福の一時でありました。人を食ったような冗談と核心を突く暴言を真顔で交互に浴びせてくるような展開の>>続きを読む

スオミの話をしよう(2024年製作の映画)

3.3

野生の勘が働き映画館に駆け込むとやはり俺得ムービー。怪作『ギャラクシー街道』のリベンジマッチような趣向だから、人によっては食べログで評価の高いイタリアンに行ったら二郎系ラーメンを出されたみたいな騙し討>>続きを読む

ラストマイル(2024年製作の映画)

3.3

極めて高い純度の満島ひかりが120分間拝めるのでそれだけで大満足。この人の「私が変人として振る舞うの、皆大好きなんだろ?」と謎の確信に満ちたあざとい佇まい、たまらないんだ。

時代とがっぷり四つなエン
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がんばれ!ジャイアン!!(2001年製作の映画)

3.3

なんでだろう、そこはかとなく笑える。「ジャイアンとジャイ子の兄妹愛」というお題目のどうでもよさが、劇場版ならではの丁寧な演出によってより一層際立っているのかな。ジャイ子は雑多な下町住まいで茂手モテ夫は>>続きを読む

天使のたまご(1985年製作の映画)

3.3

単体の映像作品として観たら、わりと好き。言わば特濃フェチムービー。定型を廃して監督が「良い」と思った要素だけで全編が構成されている様は何より清々しい。だから間違っても物語としての強度で採点したらいかん>>続きを読む

条理ある疑いの彼方に(1956年製作の映画)

3.0

それなりに面白く観たけど、フリッツ・ラングにしては禍々しさが足りないような。そつない語りで手堅くまとめた佳作という印象。どんでん返しの衝撃を目当てにすると肩透かしなので、そういったお客さんは素直に『ダ>>続きを読む

Chime(2024年製作の映画)

3.3

黒沢清とは映画の趣味は近しい気がしつつも何故か積極的には鑑賞せずむしろ避けていた。強烈に乾いてるor閉じている作風の印象があったんだろうな。自分が映画に期待するのはむしろ湿り気とか世界に対する開けなの>>続きを読む

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-04 真相!トイレの花子さん(2013年製作の映画)

3.3

「POVホラーとタイムトラベルの闇鍋をやってみちゃおう」という思いつきの時点で既に勝ち。ジャンルの枠に縛られずにフィクションの風呂敷を広げまくる何でもアリ精神は純粋に面白い。ただしモキュメンタリーとし>>続きを読む

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-03 人喰い河童伝説(2013年製作の映画)

3.3

評判は前から聞きつつきちんと見たのはなんだかんだ初かも。ワハハと笑いつつサクッと怖い良質ホラー。若いカップルが河童捕獲を目論む撮影映像が個人的には推し。二人の能天気なイチャイチャが描かれれば描かれるだ>>続きを読む

インサイド・ヘッド2(2024年製作の映画)

4.0

「1」は未見です。主人公が思春期の女の子でも直面する悩みは「新しい環境へ適応できるかの不安」や「果てしない成長へのプレッシャー」と現代社会に押し潰されそうな大人であれば共感できるものなのが上手い。暴走>>続きを読む

のび太の結婚前夜(1999年製作の映画)

3.3

Wikiによると静香父が咳き込み静香ちゃんが不安になる場面は映画オリジナルらしい。素晴らしい脚色だなと。その後に続く静香父の名台詞にはやはりウルリ。ただ注目したいのは、静香ちゃんが産まれてから今日に至>>続きを読む

ぼくの生まれた日(2002年製作の映画)

3.3

演出をただリッチにしても感情の高まりよりはむしろ白々しさが漂うのだから、映画というのは本当に難しい。なので全編通じてやや乗れずではあったのだが、出産後ののび太母が「えっへんどうだすごいだろう〜」と戯け>>続きを読む

ターミナル(2004年製作の映画)

3.5

Wikiによると主人公のモデルが実際に空港内で送った暮らしはホームレス同然のものだったのだという。「実話を基にした」と謳いながらその辺は上手に脚色しているわけだ。別に腐したいわけじゃなくて、むしろこの>>続きを読む

シークレット・ディフェンス(1998年製作の映画)

3.5

2時間半以上に渡って薄らと緊張感を持続させるのはかなりの妙技ではないかと感心しつつ、「電車の乗り降り」等の普通の映画なら絶対にカットされる微細な日常動作を逐一盛り込む執念じみた演出には幾度となく気絶し>>続きを読む

パリでかくれんぼ(1995年製作の映画)

3.5

長い映画は映画館で見るに限る。パリを舞台に交差し反響する三人娘の瑞々しい青春模様にどっぷり浸れて大満足でした。ジャック・リヴェットはお初だったけど、唐突にミュージカルを投入する奇人ぷりを発揮したかと思>>続きを読む

マイ・エレメント(2023年製作の映画)

3.5

劇中でエンバーが直面する問題は現代人のお悩みごた混ぜ。恋・仕事・夢・自己実現・アイデンティティー……一本の映画としては要素をもう少し取捨選択しても良かった気もしつつ、複雑な現実を小器用に摘み取りながら>>続きを読む

ドラブル(1974年製作の映画)

4.0

クールな仕事人マイケル・ケインが組織と家庭の板挟みになりつつ誘拐された息子を取り戻すために八面六臂の大活躍……ってこれだけ聞くとお父さんの妄想をそのまま書き起こしたみたいな内容だな。でもドン・シーゲル>>続きを読む

違国日記(2023年製作の映画)

3.0

原作の雰囲気を損なわないように細心の注意が払われているとは思いつつ、なんつーか全体的にマイルド過ぎる。「自分の人生に不可逆な影響(≒呪い)を与えてきた巨大な存在を不慮の死で失った後にその現実をどう受け>>続きを読む

マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

3.0

前作の狂気的濃度を期待すると肩透かしだけど、次世代に向けた「それなりに適応しつつ頑張れよな!」なメッセージと愉快なガジェット盛り盛りの趣きはジョージ・ミラーの在庫一掃セールとしては及第点では。アニャ・>>続きを読む

昼下りの女 挑発!!(1979年製作の映画)

3.0

うーん、異常展開乱れ打ちな構成は面白くはあるのだけど、「異常をやり続ける」という意味では終始想定内なので、へ〜そうなんすねと乗り切れない感がややあり。人妻からゲイへの贈る言葉「キミは強い」やスクリーン>>続きを読む

ピノキオ(1940年製作の映画)

3.5

「世界は怖いんだからね」と子どもに教えるのにこの映画はうってつけだけど、「世界は怖い」をあまりに魅力的に描いているという問題がある。具体的に挙げるとヴィランズがとにかく素晴らしい。まず山田康雄の正直ジ>>続きを読む