ひでやんさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ひでやん

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ある男(2022年製作の映画)

3.9

分からなかった真実より、共に過ごした事実。

男の後ろ姿が正面で左右反転せずに、そのまま鏡に映り込むマグリットの絵が映され、タイトルバック。意味ありげな冒頭から興味が湧く。そして車窓に映る自分の「顔」
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フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

3.6

トウモロコシ畑でつながって。

あの日あの場所に、置き忘れた夢がひとつふたつ。家族や仕事や友や恋…悩みの絶えない人生が積もり、夢に蓋をする。それは縦積みにされた雑誌のようで、一番下の夢が引っ張り出せず
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ワイズマンとのピクニック(1968年製作の映画)

3.8

穏やかな陽だまりの中で。

緑の木立でレコードが回り、スーツがフルーツを食べて、椅子がサッカー。チェス盤がゲームをし、塵取りがせっせせっせと穴を掘る。草の上で繰り広げる家具たちのピクニック、無人のピク
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J.S.バッハ G線上の幻想(1965年製作の映画)

3.6

最低音の弦が奏でる音とイメージ映像の共振。

脚本を使わずに即興的に撮影したというシュヴァンクマイエルのモノクロの短編。全体を暗闇が占め、壁や窓、扉や鉄枠が音の響きと重なる。正面から捉えた平面の映像に
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フード(1993年製作の映画)

4.0

食事をテーマに3部構成で描いた短編。

食べてりゃとにかく生きられる。生きてりゃなんとかなる。辛い事があるとそんな事を考える自分だが、そのポジティブ思考を破壊するシュヴァンクマイエル。幼少期に食べ物へ
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ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

3.8

青い巨人が支配する惑星で。

ぶっ飛んだ発想力と想像力に感心。奇怪で不気味な生物や植物、独創的な建造物、強烈なドラーグ人のビジュアルなど、この世界観を70年代に描いた事に驚き。宮崎駿が今作を観て「日本
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Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)

3.9

B級感が漂う極上のハードボイルド・アクション。

月曜日、火曜日…と、スピーディに描く中年男の一週間。1日を2,3秒くらいで描く日常ルーティンのテンポが気持ちいい。ジャームッシュが観たらきっと苦笑いだ
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ファーザー(2020年製作の映画)

4.2

追憶と忘却の狭間で揺れる木の葉。

誇り高く生い茂る知性の葉が、はらりはらりと散りゆく黄昏。冬枯れの心に浮かぶは若葉の日々…。

記憶があるから認識出来て、いつどこで…の5W1Hが分かる。その「当たり
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ミナリ(2020年製作の映画)

3.6

じわじわとやってくる余韻。

農業で成功することを夢見てアメリカの田舎町にやって来た韓国系移民家族の物語で、序盤から『北の国から』に似た雰囲気。夢見る父と現実を見る母が衝突し、父の身勝手さだけが目立つ
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オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)

4.0

渇望の具現化と、おとぎ話の映像化。

不妊に悩む夫婦が、赤ん坊の形に削った切り株を我が子としてかわいがるダークファンタジー。序盤から夫の幻覚が強烈。水槽に網を突っ込んで赤子をすくい、新聞紙に包んで客へ
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ファウスト(1994年製作の映画)

3.8

唯一無二の不気味な世界。

ゲーテの戯曲を独自でアレンジし過ぎて、あまりにもかけ離れたラストに唖然。15〜16世紀頃の錬金術師を、現代の中年サラリーマンに置き換えたシュヴァンクマイエル版『ファウスト』
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アリス(1988年製作の映画)

4.3

ファンタジーが好きな子供の笑顔を泣き顔に変えるダークな世界。

兎追〜いし〜引き出し〜♪で不気味な国へ。バケツから地下へと続くエレベーターの中で、アリスが目にする気味悪い瓶、瓶、瓶。インク飲んでクッキ
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騙し絵の牙(2021年製作の映画)

3.5

策ある編集長は牙隠す。

大手出版社を舞台に、廃刊寸前の雑誌の編集長が企てた一発逆転の秘策を描く。騙し合いバトルに期待し過ぎてしまった。キャッチコピーに嘘はなかったが、ちょっと大袈裟。新人編集者を引き
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.2

娑婆は我慢の連続ですよ。

我慢できない事が多すぎる。正義を通せば偽善者で、見ないふりすりゃ薄情者。極道も堅気も生きづらい世の中なので、三上の葛藤に共感するものがあった。鉄格子の外に思いを馳せても夢見
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マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

3.9

そこはかとなく揺らめきハート。

先ず最初に気になったのがドランの顔にあるあざ。そりゃあ気になります。人を見るより先にあざを見るから気になる。マキシムの友人たちは、人を見ているからあざが気にならないの
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

3.7

ハリウッド的な演出の中に散りばめたドラン節。

幼少期にレオナルド・ディカプリオにファンレターを送ったというドラン監督の実体験から着想を得ている今作は、ハリウッドの豪華キャストとタッグを組んだ初の英語
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神のゆらぎ(2014年製作の映画)

3.5

道徳と戒律の狭間で。

宗教上の戒律に苦しむ女性看護師と白血病の婚約者、ドラッグの運び屋、不倫関係にある老齢カップル、アル中の妻とギャンブル狂いの夫という男女7人の運命を、現在と過去を往来しながら描く
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ドラゴン危機一発(1971年製作の映画)

3.6

チープな空気を切り裂くシャープな切れ味。

アメリカから香港に凱旋したブルース・リーがゴールデン・ハーベスト社と契約して主演した1作目で、ここからドラゴン伝説が始まったわけだが、今作はストーリーが酷く
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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

下弦の月に惑わされ、上弦の月に逃げられて。

20年近くの間、歴代興行収入が不動の1位だった『千と千尋の神隠し』を抜いて社会現象化した今作。そんなバケモノを3回鑑賞し、何がすごいのかを考えた。

1つ
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ある用務員(2020年製作の映画)

3.5

敵討ちの連鎖を断ち切る普通の女の子。

今作で登場する女子高生の殺し屋コンビが、『ベイビーわるきゅーれ』で主役になったという事で鑑賞。こっちを先に観ればよかった。今作の主役はタイトル通り用務員なので、
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ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー(2023年製作の映画)

4.0

殺せども殺せども我が暮らし楽にならざり。

てっきりパート2は、「まひろ車の免許を取りに行くの巻」だと思っていたら既に取ってた。そして「15時までにお金を振り込まなきゃの巻」で銀行強盗ボッコボコ。ジャ
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べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)

4.2

本業の殺しより苦戦するバイト。

サクッと人を殺して、ワッフルの盛り付けにあたふた。このギャップがたまんない。人殺し以外何もしてこなかった女子高校生の殺し屋コンビが、卒業目前にして社会に適応しようと奮
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(2023年製作の映画)

3.7

首を奪う百姓、首が欲しい光秀、首などいらぬ秀吉。

構想30年、6年ぶりとなる北野武監督の新作は、お蔵入り報道を気にしながら「首」を長くして待っていたが、無事公開となり安堵。漢字一文字の「首」が斬殺音
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たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

3.3

主人公が帰郷するまでの冒頭は良かったが、実家に着いてからの会話劇がいまいちだった。妹の憧れだったり、兄の苛立ちだったり、ぎくしゃくした家族の不器用さや距離感を同じ空間で描くのは流石だが、アップショット>>続きを読む

胸騒ぎの恋人(2010年製作の映画)

3.8

恋の胸騒ぎにマシュマロが降り注ぎ、恋の終わりに雨が降る。

バンバン。撃たれっぱなしの心に銃あれど、向けて放つと空砲なり。ゴダールやトリュフォーが描いた男ふたり女ひとりの構図も、ドランが描けば美青年を
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マイ・マザー(2009年製作の映画)

3.9

破壊の衝動と、元に戻す行動。

グザヴィエ・ドランが17歳の時に書き上げた半自伝的な物語で、19歳の時に監督・主演を務めたデビュー作っていうから驚き。雑誌をパラパラと捲るようなモンタージュ、モノクロの
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罪の声(2020年製作の映画)

3.7

無垢なる声を悪に変えた身勝手な正義。

昭和最大の未解決事件を題材にしたミステリー。日本中を震撼させたグリコ・森永事件の真相に迫るのだが、とにかくこの事件は謎だらけ。複数の食品メーカーを脅迫し、警察や
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浅田家!(2020年製作の映画)

3.7

普通とちゃうけど、なんか良いな…そんな家族にほっこり、時々ほろり。

家族大怪我3連チャンの序盤からコメディ色が濃ゆい。写真家・浅田政志の実話をベースに映画オリジナル要素を加えた今作は、とにかく役者が
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バニー・レークは行方不明(1965年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

失踪映画の金字塔。

紙を破るオープニングが洒落てる。モノクロによる陰影や、巧みなカメラワークが不安を煽る。アンを演じたキャロル・リンレーがお人形さんの様に美しく序盤から惹き込まれた。

シングルマザ
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ペパーミント・キャンディー(1999年製作の映画)

4.0

人生は美しい…はずだった。

ずっと観たかった作品をようやく観れた。韓国現代史を背景に、絶望の淵に立った男の20年間を描く。走馬灯のように遡る男の人生だが、序盤から主役の男ヨンホがどうも好きになれなか
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少年の君(2019年製作の映画)

4.6

絆で結ばれた鉄壁の要塞と、罪で結ばれた砂上の楼閣。

「いじめは世界的な現象であり、我々の身近でも起こっている」という冒頭のテロップで、重苦しい雰囲気を覚悟した。主演2人の熱演が胸に迫り、心を叩き、え
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ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)

4.4

神の不在と亡霊の存在。

劇場を営むエークダール家の人間模様を、クリスマスから2年間にわたって描いた群像ドラマ。5時間を超える今作を覚悟して挑んだわけだが、少年が人形芝居に興じるプロローグで目も心も持
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渇望(1949年製作の映画)

3.4

2人でいると窮屈で、ひとりになると寂しくて。

口論の絶えない倦怠期の夫婦を描いたベルイマンの初期作品。エゴをぶつけ合いながらも歩み寄る夫婦の姿を、過去を振り返りながら描いていく今作に「水」のイメージ
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ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)

4.0

トランスジェンダーの切実な願望と苦悩。

数多くの映画賞を受賞した作品は、ついつい棒高跳び程ハードルを上げてしまうのだが、絶対名作という先入観を取っ払ってフラットな気持ちで今作を鑑賞。その結果、名作だ
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mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

3.5

何にでもなれる心がアスファルトの上を駆け巡る。

自由奔放なスケーターに憧れを抱いた少年が、年上の不良グループに仲間入りし、スケボーを通して成長する青春映画。13歳のスティーヴィーが危なっかしくて、「
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Mommy/マミー(2014年製作の映画)

4.2

25歳のグザヴィエ・ドランは、83歳のジャン=リュック・ゴダールとのW受賞となり、カンヌ映画祭の新しい夜明けと、誰もが目を見張った。

今作の予告編にその文字が流れる。「誰にも自由に表現する権利はある
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