ルサチマさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

石の賛美歌(1991年製作の映画)

4.4

現在進行形のパレスチナについてパレスチナ人の作家が記録したという意味においても、そしてその記録と記憶、そのズレ方の形式的な面においてもまさに現代の映画の重要作であり、そこにいくつもの表象の難しさは語ら>>続きを読む

アスパラガス/スーザン・ピット ドールハウスの魔法(1995年製作の映画)

3.7

いかにもイメフォ的なアニメーション表現というか、それはたしかに優れた技術を感じさせるが、アニメというもの全般に感じるが、この内向性の表現が個人的には本当に好きになれない。嫌悪感すらある。

タル・ファーロウ(1980年製作の映画)

4.1

タル・ファーロウの演奏によるものか、ダンス性は強調されているように見える。ただそれ以上のものはない。

フリー・ラディカルス(1958年製作の映画)

4.0

線のダンス。ただやはりここには東アジアの書が持つ表現の力は立ち現れない。実験映画が言語以前の芸術を模索する側面があるとして、しかしやはりフレームという空間の中に線(縦画、横画)を導入するのであればそこ>>続きを読む

蒸気船ウィリー(1928年製作の映画)

4.8

音声と身体的動きの組み合わせとして、トーキー映画を考える上でマスターピースの一つかと。

二頭女-映画の影(1977年製作の映画)

4.2

人物がフレームアウトされた後も画面内に残される人物の影。性行為を終えた後ベッドの上に距離を置いて座る実写の2人の間に性行為中の2人の影が映されるショットは画面内の非同期的な時間表現として中々見応えがあ>>続きを読む

人間動物園(1961年製作の映画)

4.1

音楽武満徹。実験性のあるアニメーションではあるにせよ、風刺の仕方が直裁的すぎて特別面白いとは思わない。

へそと原爆(1960年製作の映画)

4.1

この映画で訴えようとすることの本質ではないにせよ「ロレルリラロレルリラ」といった手書き風の中間字幕の使い方には言葉と映像の関係を切り結ぶ面白さがほんの僅かながら感じ取れるが、正直その他の実写の映像に関>>続きを読む

赤いアニンシー; あるいはいまだに揺れるベルリンの壁をつま先で歩く(2020年製作の映画)

4.0

タイのB級映画の吹き替えシステムを批評的に取り入れ且つ、タイの独裁制による声なき声の表象に挑んだ作品だというが、正直全て想像の範囲内を超えてこず、例えば同じ独裁政権下でモンテイロが最初期から分裂症的に>>続きを読む

Nostalgia(原題)(1971年製作の映画)

4.3

日本語ナレーション版。
写真アルバムの一枚一枚が焼けていくのを永遠に繰り返し見せつつ、そこに被さる音は画面に映る写真と同期せず、アルバムの一枚手前の画像についての言及であり、そこにノスタルジアというよ
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Outer Space(原題)(1999年製作の映画)

4.0

フッテージを使用したホラー表現として分かりやすくも、まぁ実験系でよく見るタイプの映画でしかない。

ザ・ミッドナイト・パーティ(原題)(1969年製作の映画)

4.3

フィルム版。あらゆる視覚的な表現の模索がなされてはいるが、アニメーションと実写の境界を超えるようなラスト(雷を投げつける男)に一番当時の映画の可能性への模索を感じる(純粋な映画制作者とは異なるコーネル>>続きを読む

アンダルシアの犬(1928年製作の映画)

4.6

フィルム版。イメージの連鎖によって繋がるモンタージュは言わずもがな、同時代のスペインで言えばオマール同様に人工的に強烈な視覚的イメージがモンタージュというよりコラージュされていくのが面白い。

朝の火(2024年製作の映画)

3.8

撮影は自主制作のレベルを超えていて視覚的に驚かされるものはあるし、青山真治を継ごうとする意思のようなものは多摩美勢の中では一番感じられるのだが、人間に対する眼差しのパッションこそ受け継いで欲しい。。>>続きを読む

はなとこと(2024年製作の映画)

1.0

ダメな情緒しかない。大人も含めてどうしてこうも子供じみたヤツしかいないのか。別れる理由ですらかつての友人を言い訳にしているような甘ったれたヒロインをどう魅力的に感じればいいのかわからない。成人してれば>>続きを読む

松坂さん(2024年製作の映画)

1.0

作り手の小狡さ、幼稚性ばかり目立つ。本当にこれが表現したいことなのだとしたらあまりに世界が狭すぎる。

胴鳴り(2024年製作の映画)

4.2

語られている話に必然性を感じさせてくれた上に新潟ロケも、あの胴鳴りの予兆として海辺の崖を風がいっきに吹き荒ぶ瞬間を捉えているのは白眉であり、撮影場所の選択についても野心を感じさせてくれた。
ただ、この
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WALK UP(2022年製作の映画)

4.1

最近のホン・サンスではいい。ただ、近年のただの自己模倣的なズームの使用も封じてはいるが、そうなると本当に俳優の自然主義演技を記録するだけにカメラが使用されてしまう。辛うじて過去の夫婦生活の会話のやり取>>続きを読む

エグザイル/絆(2006年製作の映画)

4.1

描こうとすることは悪くないし、これまでの作品とは違う方向性を模索しようとする気概は感じるのだけど、仕上がりとしては中途半端なアート作品になってしまってる印象は否めない。ラストのスローモーションでの銃の>>続きを読む

ブレイキング・ニュース(2004年製作の映画)

4.0

冒頭から頑張って長回しをしながら銃撃戦の緊張を作ろうとしていたりはするけど、悪く言えばトーはカメラを無駄に動かしたがる癖があり、そうした趣味が作為性と結びついてしまい、撮影をする上で空間演出と結びつか>>続きを読む

城市特警(1988年製作の映画)

4.2

キャラ造形の参考になるような作品の一例。
手の痙攣と拳銃の暴発のサスペンスとしてはやはりエレベーター内での銃撃戦が白眉。
トーの中では一番アクションがスタイリッシュだとは思う。

暗戦 デッドエンド(1999年製作の映画)

4.4

トーの最高傑作かも。クサイんだけどラストにはグッと来て泣けてしまう。冒頭から無意味にカッコつけたカメラの軌道に馬鹿馬鹿しくて笑ってしまうが、バスで出会う女との距離の縮め方(サングラスをかけさせて、同じ>>続きを読む

リンダとイリナ(2023年製作の映画)

3.5

通常通りで何ら新しさもない。同録での撮影だろうが、ギヨームの同録の効果は単なる自然主義でしかなく、口をべちゃべちゃ動かして発話させた役者の語りを記録することに何の緊張感もない。具体的に言えば前半の職員>>続きを読む

若武者(2024年製作の映画)

3.0

何か意図あるようで、結局大した意味のない画面が続く撮影が小賢しい。だがこの撮影に対する意識の低さは、何度か用いられるドリー撮影を見れば明らかで、そこには移動を伴うものの、映る空間の(距離の)緊張感がな>>続きを読む

枝葉のこと(2017年製作の映画)

1.0

全然よくねぇ。。地方郊外を切り取る作家たちのナルシシズムが本当肌にあわねぇ。。

蛇の道(2024年製作の映画)

4.1

新作の『chime』に辟易していた分、期待もしてなかったが、これはそんなに悪くない。が、そこに何か新しさがあるかと言えば何もない。ただ過去作との比較で哀川翔と比べられる柴咲コウの起用については全然劣っ>>続きを読む

違国日記(2023年製作の映画)

2.0

大人の女性を撮るにあたって、少女の印象を損なうことなく、大人の女性としての魅力とともに兼ね備えた新垣結衣と夏帆を起用したのだろうが、前提となる新垣結衣の人物造形がそもそも物静かなために、どれだけ等身大>>続きを読む

走れない人の走り方(2023年製作の映画)

3.5

これも結局画面のルックは一見ちゃんとしているし、且つ編集もスムーズに、時にコミカルにやろうとしているが、それこそ最も遠ざけるべき安直さであるはずで、周囲のスタッフ含めて技術があるということを遠ざけてで>>続きを読む

恋は真っ赤に燃えて(2024年製作の映画)

3.5

板尾創路のキャスティングに驚きつつ、案の定というか板尾創路が一番いい芝居をしてる。今回取り上げられてた助成金作品では一番真面目に映画に取り組む姿勢が感じられる。つまりは、どれだけ現代的な問題を共有した>>続きを読む

勝手口の少女(2024年製作の映画)

3.0

どこで撮っても同じような映画が続く中で、今作は画面の作り方については今作が少なくとも一番まとも。冒頭、夕暮れの時間に虐待する母とその息子を最低限のカメラポジションで捉え、耐え難くなった息子が母を階段か>>続きを読む

光はどこにある(2024年製作の映画)

1.0

他の作品についても感じるがどうしてこうも自己中心的な人間が少し肯定されるような映画ばかりつくるのか。本当にどれも似た作品になってるという印象の範疇を超えないうえに、それらを作家性といえば聞こえはいいが>>続きを読む

明るいニュース(2024年製作の映画)

2.0

この作品に限らずだが、上映されたどの作品を見ても助成金を得て撮るものがルック的な見栄えにしか還元されておらず、他人の金をもとに映画を撮ることの意味を何も考えられてると思えない。カット割だとか、カメラの>>続きを読む

ニューオーダー(2020年製作の映画)

3.9

描こうとするもの自体は悪くないけど、あまりに描きこみ方がゲーム感覚すぎて、観客の恐怖を増幅させにいってるだけになってる。

ブラックライダー(1986年製作の映画)

4.2

描き方のシンプルさが潔くていい。導入部のテープを盗み出して逃走する場面の廊下のシーンなど、かなり最小限のカメラポジションでアクションを展開している(ワンカットの中でサスペンスを生み出している)が、全体>>続きを読む