『シビル・ウォー アメリカ最後の日』世界各地で起きる紛争を自国を舞台に架空の内戦として描く事で今への危機意識を煽り警鐘を鳴らす。戦場カメラマンが撮った写真数枚をカットインしたり選曲ミスっぽい場違いな音>>続きを読む
『落下の解剖学』事故か?自殺か?殺人か?彼女の犯行に仕立て上げたい検察側との白熱論戦を筆頭に会話劇を主軸として転落死の真相を明かすべく小説家同士の夫婦関係にメスが入る。自らの思いをピアノの旋律に託すよ>>続きを読む
『インサイド・ヘッド2』行動派で楽観的な幼少期から慎重派で打算的な思春期を迎えて感情の司令塔はヨロコビでなくシンパイが行動の操縦桿を握る。記憶、経験、友愛などを可視化したデザインの世界で〝自分らしさ〟>>続きを読む
『オッペンハイマー』なぜ日本へ原爆を落とすに至ったかの経緯を知ろうと3時間を食い入るように観届けた。いや実際は会話劇の情報量を巧みな編集で魅せるノーランの手腕に飲み込まれた感。史実に対し誠意ある映画化>>続きを読む
『ボーはおそれている』ビビり男が数々のトラブルに見舞われる気の毒な1週間。〝悲しみは単独でなく大挙して押し寄せる〟逃げ惑う情けないダメ主人公をホアキンが好演。セラピーハウスにてギャグを連発するシュール>>続きを読む
『左手に気をつけろ』左利きのみ罹る感染症が蔓延した世界で姉を探す女子は運命の人に会えるかも。御用だ!無邪気なこども警察と素っ気ない佇まいの名古屋愛が朴訥でシュールな井口奈己監督の作風に調和。ドキハラな>>続きを読む
『侍タイムスリッパー』現代の風景に馴染めない月代姿のシュールさと文明の利器に対するリアクションの正しさで必ず高坂新左衛門が愛おしくなる。ナルホドな一捻りある後半から監督の情熱に満ちた真剣勝負に至る展開>>続きを読む
『あんのこと』売春も覚醒剤も断ち毎日を真面目に暮らす少女の更生を汚職とコロナと毒母が妨げた。実在事件を基にした映画として「杏は頑張ってた」だけで済ますべきでない課題を本作は訴える。いつか祖母を介護した>>続きを読む
『クイーン・オブ・ダイヤモンド』ポーカー客相手にカードを配るシーンだけで長々と本編の時間を費やすシュールさ。ナンパ野郎の誘い文句から燃え盛る木のカットに切り替わる演出と幸せそうな結婚パーティーを単独ヒ>>続きを読む
『マグダレーナ・ヴィラガ』殺人容疑で逮捕される娼婦アイダの物語を時間軸をシャッフルし再構成する。視線を反らし虚空を見つめ嫌々されるがまま上体を揺らす性場面は幾度と繰り返され暴力的に哀しい。一行詩として>>続きを読む
『関心領域』塀を隔てて暮らす家族の日常風景にアウシュビッツでの悲鳴や銃声が微かに紛れ込む恐怖だけかと思いきや想定外。美しいワイド構図のロングカットが続く本編で引っ掛かる様々なシーンの違和感が解けた時の>>続きを読む
『ルックバック』あの月曜日の朝に訳もなく高揚した感動がスクリーンの中で蘇る。コマの隙間に無いはずのシーンを神映像演出で繋げて物語が再び心に浸透する。藤野と京本の声は河合優実と吉田美月喜ならイメージを上>>続きを読む
『ぼくのお日さま』仄かな恋心を機に特訓を始めるペアダンススケートはコーチも含む三人に関する物語だった。成長も別離も経験する青春の尊さと儚さをドビュッシー月の光で神々しく奏でる。柔らかく照らして優しく包>>続きを読む
『悪は存在しない』アンチ自然破壊でなく敵対する者同士は疎通できるかの物語。濱口竜介が紡ぐカットと石橋英子が奏でるスコアの高い親和性。「それって味じゃないですよね」演じ手の素らしさを次第に台詞が獲得して>>続きを読む
『ナミビアの砂漠』20代女子の怠惰的日常生活を怠惰風撮影編集で繋ぐも何故か全く飽きずに観届けられる神業。「今後の目標は生存です」役者河合優実と監督山中瑶子による新世代の感性が創り出す等身大のリアルに軽>>続きを読む
『ニッツ・アイランド 非人間のレポート』そこは命も殺めて空さえ泳げる島。リアルを維持しながら現実と微妙に異なる動作現象秩序の世界に脳がバグりそう。アバターの化身を借りる者へのインタビューは意外に真っ当>>続きを読む
『密輸 1970』業者に金品を水揚げし稼ぐ海女に税関も反社も巻き込んだ取引き裏切り駆引きの女ナメんな強奪大作戦。敢えて現代に音楽衣装など70sカルチャーてんこ盛り痛快犯罪映画を撮る韓国の気概。日活黄金>>続きを読む
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』1作目と違い受刑者アーサーの責任能力を問う精神鑑定で彼の内面に迫る法廷劇は歌に彩られた妄想のミュージカルであり運命の恋に出逢うラブストーリーだが女の思うままに翻弄される>>続きを読む
『五香宮の猫』まず最初にマイクを囓る姿で心を鷲摑みにされた。猫を介して人間性の本質や地域社会の在り方まで晒す凄い映画。「餌をやっても糞は知らん顔」可愛がられる地域猫の面も問題視される野良猫の面も両方ち>>続きを読む
『Chime』たとえ料理教室でも黒沢清の手に掛かれば背筋の凍る極上なスリラーを撮れてしまう。指導も聞かない会話も通じない生徒が異物として存在する不穏と突如ふと凶行が始まり登場人物を誰も信用できなくなる>>続きを読む
『ヒューマン・ポジション』ノルウェーらしい北欧デザインの写真集を捲るような美しく整った完璧すぎる構図の中で歩き、喋り、佇む。療養から復帰した新聞記者アスタの〝居場所〟を寄り添って形成するパートナーと猫>>続きを読む
『パスト ライブス/再会』好き同士の幼馴染が12年を経る毎に知り合うシンプルな物語。場所と境遇から関係が結ばれない二人を表情と風景にピントを当てて綴る。こんなにもキスをしないでくれと願った恋愛映画は珍>>続きを読む
『ロボット・ドリームズ』素朴なタッチながら確かな描写と軽快なテンポでのストーリーテリングが魅了する友情物語。お互いが離れ離れの間に見る夢も体験するエピソードも「セプテンバー」を流すタイミングも涙。痛い>>続きを読む
『哀れなるものたち』知った瞬間にモノクロの世界が色彩で華やぐ女版フランケンシュタインの幸福論。自由奔放なベラに群がり翻弄される男との滑稽かつ時代の本質を捉える性の縮図。頭脳と肉体の年齢差を演じ抜く圧巻>>続きを読む
『夜明けのすべて』三宅唱監督は被写体と適度な距離感を保って症例を深刻には描かない。心に不安を抱える者特有のコミュニケーション不和も笑いに変換してくれてる優しさ。こうあってほしい人間関係の理想像が提示さ>>続きを読む
『僕らのミライへ逆回転』商品を駄目にしたレンタル店は自分達で映画を再現したビデオを貸し出す博打に出たら大成功。ほぼ仮装大賞のクオリティ(とはいえMゴンドリー監修)でバカなノリの前半から結末で涙すると誰>>続きを読む
『鬼が来た!』場に迎合して上に逆らえず愚行に走ってしまう日本兵による惨劇を中国人の監督主演チアン・ウェンが我々の国民性を見透かすかの如く描き切る。コミカルな前半から衝撃の顛末に至るまでモノクロの荒ぶる>>続きを読む
『ディア・ドクター』スクリーン映えする笑福亭鶴瓶が主演を務めて一輪花の如き存在の八千草薫が助演で並ぶ配役のバランスも白衣と田園の色彩のコントラストも絶妙。無医村の現状や無免許医師を扱った社会派ドラマと>>続きを読む
『クモとサルの家族』W宇野祥平?を始め豪華な謎キャスティング、中国人子役たちが頑張る忍術アクション、出演者がアフレコする過剰な音響演出、前例のない時代劇を撮ろうと試行錯誤した監督の意欲がヒシヒシと伝わ>>続きを読む
『Sin Clock』一念発起する後半までフラストレーションが溜まった分だけ三人の計画がミスらないように応援した。前半に登場するオッサン達の自然すぎるウザイ関西弁の名演技は窪塚洋介をも凌駕する。意味の>>続きを読む
『福田村事件』差別意識が源のデマに煽られて諌める者をも飲み込んだ人災を百年後の今に知らしめる。凶行のスイッチが入ると同時に胸糞悪く和太鼓劇伴が響き渡る虐殺の末に苛まれる防げた筈の取り返しの付かない良心>>続きを読む
『波紋』様々な社会問題を織り混ぜ作風を変えてきた荻上直子は今の日本に怒り心頭なのか。夫をロクデナシに描き新興宗教にハマるも仕方なく思わせる前半と妻の異常性を暴き自らの解放に至る後半で登場人物の印象は反>>続きを読む
『ガール・ピクチャー』スムージースタンドの仲良しバイトがスランプ中のフィギュアスケーターと出逢う少女3人の青春群像図。ファッションや音楽でポップに彩られた思春期の恋や友情や性問題を悶々と切実に悩み傷付>>続きを読む
『唄う六人の女』いや、唄わない。かつて石橋義正が手掛けたバミリオンの同名コーナーはシュールさを残したまま自然保護を訴える水木しげる風幻想スリラーに転じた。「守る」竹野内豊と「荒らす」山田孝之と寡黙な美>>続きを読む
『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』〝内なる美〟体内で臓器が増殖する男の摘出手術はアートに成り得るか。痛覚を失いプラ素材を食す世界で新たな価値観と倫理観を問う。観る者の神経が麻痺する域の残虐描写に生>>続きを読む
『終末の探偵』往年のVシネマを想起させる徹底して高純度なハードボイルド。依頼を通じて炙り出される令和の日本において外国人とヤクザが抱える現状。やさぐれ人情肌な連城新次郎を演じる北村有起哉が1作だけでは>>続きを読む