zoesanさんの映画レビュー・感想・評価

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イル・ポスティーノ 4K デジタル・リマスター版(1994年製作の映画)

3.9

 「情感」が溢れていた。詩や台詞の言葉にだけでなく、何よりも表情に。海岸や砂浜、岸壁、坂道、顔見知りの共同体、漁業やバー。描かれる世界にどっぷり浸り、郵便の制帽のように、頭に馴染んで観了。
 配達担当
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太陽と桃の歌(2022年製作の映画)

3.7

 暮らし。それはきっと、地球に根ざすこと、人の間に根ざすこと。
 シンプルな暮らしの維持がかくも苦しい。ファミリーパーティーの暖かさ、秘密基地のワクワク、桃の実りに包まれてもなお。お祖父ちゃんの堪える
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フード・インク ポスト・コロナ(2023年製作の映画)

3.8

 食があらゆる環境や心とつながっている。システムの転換。壮大だけれど、小規模✕たくさんの試みに希望が詰まっている。
 欲や資本主義を、まずまっ先に疑おうかと考えた。生来、ちょうど良い味や栄養量を体が知
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カオルの葬式(2023年製作の映画)

-

 時を刻む。何気ない日常、天変地異、エキセントリックなメモリアル、いつも時は刻まれ進む。振り返ると、酸っぱい時も苦い時も重ねてきた。その刻まれる音を意識することで、苦さに慣れきった自身に直面し、やがて>>続きを読む

正体(2024年製作の映画)

3.9

 丁寧でまっすぐな作品でした。
 同調や共感の沼、無謬の沼。沼から距離を置き、正直に信じて念ずること。そこに、生きている実感が宿る。
 自身を省みると、そんなに強くない。だからこそ自分を信じるところか
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パルバティ・バウル〜黄金の河を渡って(2024年製作の映画)

3.6

 スクリーン越しでも、物凄いエネルギーが放たれる。歌謡も舞踏も身体から溢れるものとして。流し、放ち、他者とつながる。
 一弦琴は身体の中心を震わし鳴らす。なるほど。内と外が共鳴している。
 日本各地の
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アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師(2024年製作の映画)

3.3

 「生きるためだ」。
 すべきでないと感じる我慢をする、見えない聴こえない気づかないフリをする、したくない悪い行いをする。人それぞれの理由を背負って、これらを重ねる。重ねる前に持っていた、ヤバい、マズ
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ロボット・ドリームズ(2023年製作の映画)

3.6

 バーディヤー♪口笛を軽やかに。あの頃の孤独、1人テニス。ロボット、メモ貼りリマインド、工具箱だってアナログ。そして勝手にお久しぶりのラスカル。安心してこの世界観に没入して観ました。
 「友達」って、
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ゴンドラ(2023年製作の映画)

3.8

 息を呑むような美しさの山景に包まれた空中散歩。そこで反復する定期的なすれ違いが、親密なつながりを育む。
 退屈の繰り返しって、創意の源になるんだな。いたずらが創意に溢れ、どこまでもどこまでもキュート
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侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)

3.8

 8割程度入った土曜の映画館。上映中、場内のそこかしこで笑いが起きる。タイムスリップのチープさをコメディでくるみ、演技と殺陣と人情でグイグイ引き込む。
 やられた。気がつくと、熱く手を握りしめて観てい
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忘れない、パレスチナの子どもたちを(2022年製作の映画)

3.5

 いつもより少しだけキレイな格好で、残された家族が集まる。映る。亡くなった子ども達の不存在を語る。殺されたことによる大きな傷と欠落が刻み込まれている。
 子沢山の家庭が多い。映り込む服、靴、ナイキ、ミ
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シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024年製作の映画)

3.5

 人間の殺し合いは醜悪極まりない。
 それは、理由、欲、不条理で糊塗なんてできない。エンドロールの写真、赤プラスチックのサングラス。何を嘲るのか。

 古くから今日まで、途絶えたことがないそこかしこの
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花嫁はどこへ?(2024年製作の映画)

4.1

 ひたすら広大な大地と、ため息が出るほどの鮮やかな色彩。クセになるあの音楽。距離も文化も遠く離れた地の空気が、映画館の中に漂っていた。
 壮大な迷子。これはピンチ?チャンス?逞しく生きてさえいれば、縁
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独裁者(1940年製作の映画)

4.1

 スクリーンで観るチャップリン、三作目。子どもの頃にVHSで観て以来。

 改めて。チャップリンは温かくコミカルで優雅でした、今作も。たとえば、地球儀バルーンを体全部でリフティングする場面、きれいな動
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パリのちいさなオーケストラ(2022年製作の映画)

4.0

 体と心が音楽に満たされて、気持ちよく、幸せになれた。

 気持ちの音、生活の音、環境の音、人生の局面の音、幼老の音、社会背景の音。色々な音が流れて合わさる。楽器の音にも、奏でる人や聴く人それぞれの人
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画家ボナール ピエールとマルト(2023年製作の映画)

3.4

 呼吸をするように描画する。描ける関係性や環境を自明の如く優先し、描けないそれからは撤退する。だって呼吸は止められないから。
 ここでは道徳も倫理も道端に置いてあるだけ。噛み合わない悲劇も。

 絵筆
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ヒットマン(2023年製作の映画)

4.0

 窮地になればなるほど際立つ、頭の回転の速さと演技力。演技の職人技をみて、その大切さを痛感した。
 意味を考えるより、見た目や発する言葉を模倣して、気がついたら思考まで身についている。武道の修行もこれ
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ぼくのお日さま(2024年製作の映画)

3.9

 氷上に射す光が、柔らかくキラキラと音を奏でて、心地よく想いを包んでいた。魅力的な曲線を描くには、直線的なフィギュアの刃が必要。素直さを貫くには、何が必要なのだろう。
 障害や偏りがキレイに描かれすぎ
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エターナルメモリー(2023年製作の映画)

3.5

 人生を通じて身につけてきた様々な皮が、認知症によって1枚ずつ剥がされていく。中から現れた生の自身が、あんなに愛に溢れているなんて。
 愛を伝える、向けられた気持ちを抱きしめる、響く音にたゆたい踊る。
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きみの色(2024年製作の映画)

3.8

 ピントが合う、色が走る、音と繋がる。
 閉じて錆びていた青春の引き出しを、優しく開けてくれる作品でした。「きれい」。あんな風に呟けたことあったかな。

Chime(2024年製作の映画)

-

 日常生活に溢れた、意識していない音の数々。チューニングが狂うだけで音を意識化し、不穏と不安だらけの異なるセカイへ行けてしまう。差す光まで変わる。自分を含む誰にでも起こり得ることかも知れないと思わされ>>続きを読む

ボレロ 永遠の旋律(2024年製作の映画)

3.5

今日は映画館が満員で、熱気があって、何だか嬉しかった。映画も映画館も好きだから。

人生の中で聴こえた音や拍の端切れのようなものを、丹念に集めて編み上げる。改めて、途方もない作業だ。さらに期限
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歩女(2024年製作の映画)

-

誠ハウジングの日常、乾いたヒールの音、冷感ある視線と足先。比して、ぬめる靴、ネバつく猜疑心、血塗られ湿った光。観た後は、体の内側がじっとりとしていた。
得体が知れず恐ろしいことって、自分
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モダン・タイムス(1936年製作の映画)

3.9

劇場スクリーンで観るのは初めて。

劇的な革新の副作用は必ずついて回る。この副作用は、弱い立場の人々の間で顕在化しやすい。昔も今も。そんな中、生きる力になり得るのは他者とのつながりと笑
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ルックバック(2024年製作の映画)

3.8

迸る、噛み締める、ピンとくる、焦る、のめり込む。殻を作って籠って、破ってつながって。そうだった。そんな日々を送ってきた記憶や感触を引っ張り出された。
今の自分自身はどんな生き方になって
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キングダム 大将軍の帰還(2024年製作の映画)

3.5

貫き通す気持ちを受け取った。それは塔のようにそびえ立ち、観ている我々すら鼓舞し慰撫する。

だが。
削ぎ落とされたアナザーストーリー。その欠落感は否めない。裾野が広がらない山を
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大いなる不在(2023年製作の映画)

3.8

積み重ねて前に進んできたはずの人生。でも、切れ端やはみ出し、取るに足らないと目を向けてこなかったことが、実は人生の大半なんだろうな。貼られたメモ、刷られた写真、使われない自作アンテナ、塞がれた内鍵。そ>>続きを読む

あんのこと(2023年製作の映画)

3.8

色彩や明暗の光が印象的だった。そこに浮かぶ人の表情や存在に、気持ちをつかまれた。
澄みが通底していた。ゴミも毒もドラッグも邪心も、純粋に穢れていた。その分リアリティから離れているはずな
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アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家(2023年製作の映画)

3.5

容易に理解させてなんてもらえない。
ただ、もっと知りたくなる。
目を逸らした深淵を。
無の一部である存在を。
神話と人自身の重なりを。

作品群が匂い立ち、湿り気まで伝わってきた。3Dどころの騒ぎじゃ
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男女残酷物語/サソリ決戦(1969年製作の映画)

3.6

ポップな美術と衣装に気持ちが沸き立った。
主役2人の表情が、そのままストーリー。恍惚の表情すらおかしみ満点。
色んな意味で、仕事人がいました、ここに。

オペラ座の怪人(2004年製作の映画)

3.7

パイプオルガンの旋律で、身体中の細胞がゾワッと沸き立つ。音楽は終始圧倒的だった。
ままならない人の気持ち。時を経ても消えない。ひそむ。深くひそむ。

ハロルド・フライのまさかの旅立ち(2023年製作の映画)

3.7

"You will not die."
このリズムに歩調が合う。前に進む。

友人を救おうとする過程で、自分の過去を掬う。
避け続けてきたことに向き合うのは、やっぱりしんどい。向き合ってフタがとれた心
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天安門、恋人たち(2006年製作の映画)

3.7

「幻想」ってやっかい。前半の語りの欠片が留まったまま観了した。恋愛も政治も「幻想」とすると、肌の湿った交わり、天安門行きトラック荷台への駆け出し、寮内で眼前の相手に発した声、どれも実身体性を増せば>>続きを読む

恋するプリテンダー(2023年製作の映画)

3.7

ひたすらハッピー。
こんな時間があっても良いじゃないか。

キッド(1921年製作の映画)

4.2

スクリーンでは、今日初めて鑑賞。
日常を真っ直ぐ生きるから、温もりや笑いが生まれ、人の心に染みる。主人公と子役の愛情や弱さや視線、母の苦悩と悔恨、警察官の仕事ぶり、パワフル兄の弟愛、市井の人々の生き方
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ボブ・マーリー:ONE LOVE(2024年製作の映画)

3.8

きっと、人は生きやすくなるために、集い、自由を求め、国を創った。心を蹂躙し、誰かの大切な人や地球を傷つけるためではないはず。「想像の共同体」に過ぎない国なんてない世界を夢見る。境界線をひとっ飛びに超え>>続きを読む