「市民参加の委員会」案、盛り込まず 山下ふ頭再開発で検討委が答申

堅島敢太郎
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 カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致が中止された山下ふ頭(横浜市中区)の再開発で、市の検討委員会(委員長=平尾光司・専修大学社会科学研究所研究参与)は26日、「緑でつながる歩行者空間」の整備などを盛り込んだ答申を山中竹春市長に手渡した。

 検討委は学識者11人、地域関係者6人の計17人で構成され、昨年8月から6回にわたって議論してきた。

 答申では「『緑と海辺』空間の創造」「持続可能なまちの実現」「横浜らしさと賑(にぎ)わいが広がる都市モデルの構築」の三つの方向性を掲げた答申案を、ほぼ踏襲する形となった。

 市は今後、この答申を踏まえて事業計画案を作成し、市民から意見を募集したり意見交換会を開いたりした上で、事業計画を策定する。

 山中市長は「新しい時代の象徴となるまちづくりを進めていきたい」と語った。

 一方で、学識経験者として検討委に加わった幸田雅治・神奈川大教授は「市民が参加する事業計画検討委員会の設置」を提案していたが、答申には盛り込まれなかった。

 答申案について議論した9日の検討委では提案は多数決で否決されたものの、幸田氏は少数意見として答申に付記するよう要望していた。

提案の委員「短時間で強引にまとめた」

 この点について、平尾氏は記者会見で「(検討委は)開発の方向性をつくることがミッション。市民参加の形をどうするかは次のステップで次元が違う話」と説明し、市の担当者は「具体的な意見は答申の付属資料にあたる会議録として公表する予定」とした。

 幸田氏は朝日新聞の取材に「答申案の検討は極めて短時間で、強引にまとめたやり方は異常だ。今後の事業計画案検討は、市民が実質的に関与する方法で行われなければならない」などとコメントした。

 また、市民有志らもこの日、記者会見を開き、答申について「『大規模開発』と『市民生活第一のまちづくり』という相反する方向性が無理やりまとめられている」などと指摘した。会見者の一人で横浜市保土ケ谷区の中村寛三さん(78)は「山下ふ頭は市民の共有財産。市民の福利厚生のために使うという方向性こそふさわしい在り方ではないか」と話した。

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