中国、トランプ再来で「マスク効果」期待 新時代のキッシンジャー?

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北京=井上亮
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 トランプ次期米大統領の就任が迫るなか、同氏に近い起業家イーロン・マスク氏の動向が中国で注目されている。中国政府も良好な関係を築いており、対中強硬路線が鮮明な次期政権にあって中国に有利に影響するとの期待があるからだ。ただ、先行きは不透明感が強く効果は心もとない。

 「トランプ2.0時代のマスク効果は実に期待できる」

 南京大学国際関係学院の朱鋒院長はシンガポール紙の取材にそう強調し、マスク氏が米中経済協力の利点を説くことなどによって、米中関係を比較的制御可能な方向に持っていける可能性があるとの考えを示した。

 トランプ氏は対中関税率引き上げを表明するなど圧力を強めている。王毅(ワンイー)国務委員兼外相が昨年12月、「我々は米国との対話を維持し、両大国が共存するための正しい道を共に模索することを望む」と述べるなど、中国は米中対立の先鋭化を管理したい意向をにじませている。

記事後半ではマスク氏とある中国政府高官との関係や、期待の一方で残る慎重論も紹介します

テスラ工場で高官と関係構築 台湾は「中国の一部」発言も

 そこで名前が挙がるのが、マ…

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この記事を書いた人
井上亮
中国総局|政治外交担当
専門・関心分野
中国社会、人口減少、移民
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    佐橋亮
    (東京大学東洋文化研究所教授)
    2025年1月13日12時55分 投稿
    【解説】

    米中関係を救うのはイーロン・マスク氏ではないか。そのような楽観的な期待が中国にあるのは事実です。さらに、清華大学の閻学通教授のように、中国政府はトランプ政権のマネージをもう学習済みであるし、長期的なアメリカの影響力低下も福音、さらに台湾海峡危機も起きないだろうという楽観まであります。 ただ、こうした楽観論の一方で主流にみえるのは、もちろん米中関係の先行きに対する悲観論です。北京大の買慶国教授をあげるまでもなく、結構皆さん心配しています。 昨年冬、リマでの米中首脳会談では中国側は4つのレッドラインを提案して、踏み込まないで欲しいラインをアメリカに伝えていますが、トランプ政権でそれが守らせていくことができるのか。台湾問題でことを率先してアメリカが変えていくことはないか、経済安全保障問題で中国に少しばかり配慮してもらえないか、人権問題などでうるさく注文を付けてこないか、なにより米中の違いを尊重してくれるか。心配は尽きないのでしょう。 習近平氏の代わりに、中国からも政府高官がトランプ氏の就任式に出席予定です。トランプ側は最高指導部の一人、蔡奇を望んでいると報道されています。中国も応じるかも知れませんが、それで果たして米中交渉の道が切り開けるかどうか。 マスク氏にしか希望を託せない状況、とさえ言えるかも知れません。記事も指摘するとおり、マスク氏が外交にどこまで口を出せるかに加え、「賞味期限」が問題です。前政権でスティーブ・バノン氏は、トランプと対等に見える雑誌の表紙がでたことも一因となって政権を追われました。今週のニューヨーカー誌は、すでにトランプ以上にマスク氏が目立つ形で就任式の宣誓を風刺画にしました。果たして、トランプ氏がマスク氏をどこまで許容できるか。見物です。

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