イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MUSIC AWARDS JAPAN、エントリー作品発表会後における私見を記す

今年初開催となるMUSIC AWARDS JAPANは、3月13日木曜にエントリー作品発表会を開催しています。

今回はMUSIC AWARDS JAPANに対する、現段階での私見をまとめます。なお、一般投票部門については別途エントリーを設け、紹介しています。

 

 

MUSIC AWARDS JAPANがエントリー作品発表会を開催した3月13日、音楽賞のホームページが一気に動き出した感があります。加えて同賞の公式YouTubeチャンネルにて上記動画やエントリー作品プレイリストを用意する等、SNS発信も含め充実し始めた印象です。

一方で上記ホームページは、ブログエントリー執筆段階(3月14日午前5時)でも極めて重いことから、特にスマートフォンを経由してチェックする方に向けて軽くすることが必要と考えます。エントリー作品発表の詳細についてはむしろ、MUSIC AWARDS JAPANを開催するCEIPA(一般社団法⼈カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会)のほうが見やすく、また軽いという状況です。

それでも、YouTubeにて今回のエントリー作品発表会をきちんと発信することは好いと考えます。もっといえば、通常の音楽賞ならばノミネーションの段階で発表することが一般的であり、エントリー作品の発信はその前段階ではあるのですが(ゆえに"エントリー"と"ノミネート"はきちんと分けて紹介する必要があります)、新設音楽賞は当初から透明性を強く謳っており、その意思が前段階での発表に示されたと捉えています。

 

さて、MUSIC AWARDS JAPANのX公式アカウントでは、主要6部門についてあらためて紹介しています。

・MUSIC AWARDS JAPANのXアカウント(→こちら)、3月13日18時前後のポストより。添付画像のみ引用しています。

ここからわかるのは、音楽賞のエントリー作品選考基準の多くがビルボードジャパンに基づいているということ。他方、これら画像にはオリコンの文字が登場しません。これは後発チャートであるビルボードジャパンが時代に即した変化を続け、社会的ヒット曲の鑑と成るべく自問自答を続けてきたことの成果と捉えています。音楽賞の認知度上昇と共に、ビルボードジャパンの知名度も上がっていくことを願うばかりです。

 

そのオリコンにも合算シングルランキングはありますが、フィジカルセールスのウエイトが大きい状況は発足時から変わっていません。しかしフィジカルに強いアイドルやダンスボーカルグループを中心に、オリコンでの上位進出結果を訴求する歌手は今も多い状況です。そしてオリコンがほぼ変化しないながらも未だ音楽チャートの代名詞と成っていることが日本の音楽のデジタル化が遅れた一因だと、厳しくもそう捉えています。

そのオリコンを、STARTO ENTERTAINMENT側はビルボードジャパン以上に重視するという印象でした。加えて同事務所は日本レコード大賞と距離を置く姿勢を採っていたといえます。その中にあってNEWSによる上記ポストの発信は、少なくともMUSIC AWARDS JAPANにおいては事務所側が前向きである、柵を設けていないことの証明であり、このことひとつをとっても新設音楽賞の意味を感じずにはいられません。

 

このNEWS「チャンカパーナ」のエントリー作品リストインは、彼らがサブスク解禁を実施しヒットしたゆえ。一方でSTARTO ENTERTAINMENTをはじめとしてサブスクを解禁していない歌手は未だに少なくないのですが、MUSIC AWARDS JAPAN各賞のエントリー作品については様々なサブスクサービスにてプレイリスト化されています。

サブスク未解禁作品はエントリーされてもプレイリストに入れず、機会損失を招いていると考えます。新設音楽賞やCEIPA側が目指す日本の音楽の世界への発信は、サブスク解禁が前提となります。頑なにサブスク解禁を拒否し、マイナスイメージばかり訴求する歌手もいらっしゃいますが、今回のプレイリスト登場はそのような歌手側の姿勢を転換させる大きなきっかけになり得るものと期待します。

 

 

さて、ここまでは好い点を記載しましたが、気になる部分がないわけではありません。

 

MUSIC AWARDS JAPAN側はエントリー作品発表会についてのプレスリリースを3月13日夕方に用意しています。おそらくはその時間に合わせて解禁する設定だったのではと感じるのですが、たとえば一般投票部門においては同日午前の段階で解禁するところも少なくなく、足並みが揃っていません。

イベントの存在等をより印象付けるためには、日時を決めた上で一斉公開するほうが好いはずです。4月17日のノミネーション発表の際は、フライングのないことを願います。

 

また、Spotifyを経由した一般投票部門の用意はこのサブスクサービスでの再生回数の過熱につながりかねず、真のヒット曲がみえにくくなると懸念しています。聴取せずとも投票は可能ですが、ライト層による聴取行動が可視化されやすいサブスク動向にコアファンの熱量が強く反映されかねません。音楽賞側、またビルボードジャパン側も投票期間中の聴取行動の変化を分析し、次回以降の見直しを見極める必要があると考えます。

(なおMUSIC AWARDS JAPANの投票方法はグラミー賞的といえますが、一般投票部門についてはアメリカン・ミュージック・アワード的と感じています。コアファンの熱量を反映する部門の存在を個人的には否定しませんが、過度な熱量は(特に推す歌手が選ばれなかった際の)賞への過度な反発にもつながりかねないことを考慮に入れる必要があるでしょう。一般投票部門は主要部門ではないことをはっきり訴求することを願います。)

 

そして、受賞式当日の司会者を誰が担当するのかも気になります。グラミー賞では直近の5年間、コメディアンのトレバー・ノアが務め、米アカデミー賞では同じくコメディアンでもあるコナン・オブライエンが今年の司会を担当。人種差別発言が問題になった俳優へのコナンの対応が評価されています。

MUSIC AWARDS JAPANでもお笑い芸人が司会を務める可能性が考えられますが、人権意識が急速に高まる(一方で激しい揺り戻しも起きている)世界にこの音楽賞が生配信されるならば尚の事、社会の変化を柔軟に察知し、社会への高い意識を持ち、そしてそれをユーモアも交えつつ発信できる方が司会を担当することを望みます。

尤も、日本のエンターテイナーによる社会に向けての発信は少ない印象です(特に選挙時において)。しかし世界に出るということは、その者の社会への意識がはっきり問われることと同義と考えます。そのことを司会や登壇者をはじめ、音楽賞全体が心に留めることを願うばかりです。