企業の採用面接といえば、これまでは直接企業に出向いて行うものでした。
ただ、最近では、時間や場所にとらわれないように、オンライン上で採用面接を行う企業が増えています。ソフトバンクは、2020年5月末から新卒採用選考における動画面接に、AIシステムを導入することに。
今回は、AI面接に興味津々の編集部メンバーが、本システムの企画担当者にその仕組みや、採用のちょっとした裏事情を聞いてきました!
ソフトバンク 人事本部 採用企画課 中條 由唯(なかじょう・ゆい)さん
2015年、新卒でソフトバンク株式会社に入社以来、新卒採用を担当。採用業務の中で、主に選考設計、テクノロジー導入、インターン企画・採用ウェブサイトの制作に携わる。
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取材はオンラインで実施しました
ベテラン人事の評価をAIに。AI動画面接システムの仕組み
今日は、AI動画面接システムについて徹底的に教えてもらいたいと思います。できれば詳しい仕組みなどの裏側も。
よろしくお願いします。色々な事情があって、どこまで話せるかはわかりませんが、可能な範囲でお答えしますね!
ギリギリを攻めにいきます!
はい……。
早速ですが、AI動画面接システムはどんなことができるんですか?
新卒採用の一次選考を、AIによって合否判定するものです。応募者に事前に設定された質問に対する回答を動画で提出してもらい、その動画データをAIシステム開発会社のエクサウィザーズ社と共同で独自に開発したAI動画解析システムで評価を自動算出します。
中條「動画で話してもらうことは、端的に話してもらえるように、あらかじめ設問と時間(30秒~1分間)を設定しています」
評価の自動算出が具体的にどんな仕組みになっているか教えてください。
過去の動画データと、ベテランの採用担当者による評価を動画解析モデルに学習させて、過去の合格者に近いと判断した動画を合格の対象として選出しています。不合格の判定が出たら、人事担当者が実際に動画を確認して、面接の合否を最終判断することで選考の正確性を担保します。
いつ頃からAI化の話は進んでいたのでしょうか?
実は2018年のインターンで「多くの応募者の中から、より当社の希望するインターン像に近い学生を選抜したい」という想いから、動画面接を導入していました。そのときからAI化の話は上がっていました。
なるほど。人の評価軸をAI用に言語化・指標化したという理解なのですが、具体的にどんな基準で評価を行っているか聞いていいですか?
うーん……。「話し方」や「文章構造」……とか?
もうちょっとくわしく!
あまりくわしく教えると面接対策ができてしまうのでダメです! 実は、人事内でもプロジェクトメンバー以外には公表していないので……。
しつこくてすみませんでした!!!
AI動画面接システムの先駆けとなった動画面接
これまで、「エントリーシートの選考をAIで自動化する」「学生からの問い合わせにチャットボットを活用する」など、業務効率化のためにテクノロジーを活用。そこで、カルチャーフィットや意欲を見る上できわめて有効な動画面接を導入するに至りました。
時間、お金、公平性…… 今の就職活動にはまだまだ課題が。AI動画面接システムで解消できたこと
そういえば、AIが合否を判断するということですが、精度は大丈夫でしょうか? また、どのように品質を上げていったのかも教えてください。
人間が判断を行うのと遜色ない精度になってます。3カ月くらいかけて、AI vs 人間の判断で評価の比較検証→改善をし続けて品質を上げていきました。その過程は新しい概念や理論、アイディアを実証するための検証「概念実証(PoC)」※そのものだったので、あれはつらかったなあ……(しみじみ)。
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Proof of Conceptの略
お、お疲れさまでした……。具体的にはどんな改善を?
これも具体的には言えないのですが、評価指標を細分化したり、今まで感覚的に判断していたものを言語化したりしましたね。
実際に運用してみて見えてきた効果があれば教えてください。
学生側と採用側でそれぞれ効果があると思いますね。一番大きいところでいうと、学生側は「時間とお金の負担が減る」、採用側は「時間と場所確保の負担が減る」ところです。従来の採用面接は、どうしてもお互いのスケジュール確保が必要になります。そこで、まずは学生が面接を予約するための“予約クリック戦争”が多発し、面接の機会を得られない学生が多々いました。予約を開始して5分後にはすべての枠が埋まる、みたいな。
また、せっかく予約ができても、特定のテーマに沿って話す30分のグループディスカッションのために時間も交通費もかけて来社してくれていたので、学生の負担は大きかったと感じています。動画面接のほうが学生が自身の経験や想いを伝えやすいとも思います。
学生側と採用側でそれぞれ効果があると思いますね。一番大きいところでいうと、学生側は「時間とお金の負担が減る」、採用側は「時間と場所確保の負担が減る」ところです。従来の採用面接は、どうしてもお互いのスケジュール確保が必要になります。そこで、まずは学生が面接を予約するための“予約クリック戦争”が多発し、面接の機会を得られない学生が多々いました。予約を開始して5分後にはすべての枠が埋まる、みたいな。
また、せっかく予約ができても、特定のテーマに沿って話す30分のグループディスカッションのために時間も交通費もかけて来社してくれていたので、学生の負担は大きかったと感じています。動画面接のほうが学生が自身の経験や想いを伝えやすいとも思います。
AI動画面接システムを入れた効果
学生側 |
採用側 |
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定量効果 |
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定性効果 |
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本プロジェクトを通じて、中條さんが得た学びがあれば教えてください。
前例がないことだったので、かなり大変だったのですが、学生ファーストでテクノロジーを活用する取り組みを実現できたことがうれしかったですね。
今後は採用業務にどのようにテクノロジーを活用していきたいとかありますか?
あくまでも私の妄想の範囲なのですが、動画を解析して特定の強みを持った候補者を洗い出せたり、新卒採用だけではなくショップクルーなどの採用にも活用できたりしたら面白いと考えています。あくまでも私の個人的な見解です(念押し)。
夢が広がりますね!
これまでも、内定者同士が交流できるオンライン懇親会の実施やSNSの構築など、より学生の人となりを理解するための新しい取り組みを行ってきました。時代を先取りした学生ファーストの取り組みを行っていきたいですね!
ありがとうございました!
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(掲載日:2020年7月31日)
文:ソフトバンクニュース編集部